昔からヒマラヤの奥地に生息しているとされている謎の獣人、雪男ことイエティ。
これまでに多くの登山家らによって足跡やその姿が写真に収められ、実際に生息しているのではないかと昔から考えられてきた。
現地ネパールの人々には妖怪や霊獣のように考えられていたふしもあり、寺院には「イエティの頭の皮」「イエティの手」等とされるものが祀られている所もあった。
また、ヒマラヤに調査に行った人々が雪男のものらしき毛や歯、ふんなどの痕跡を発見した事もあった。このように、昔から長く目撃されており物証も多く存在していたため、イエティについては生息の可能性が高いのではないかとされてきていた。
だが、この度アメリカの研究者らが、これらイエティのものではないかと考えられていた物証について遺伝学的調査を行った結果、残念ながら複数のクマのものである事が判明したと学術誌に発表した。
今回の研究はニューヨーク州立大学バッファロー校教養学部のシャーロット・リンドクビスト准教授らによるもので、調査対象は有名な「イエティの手」や博物館、個人が所有していた「イエティのもの」とされる証拠品の数々。調査の結果、実際にはツキノワグマやチベットヒグマ、ヒマラヤヒグマのものであった事が判明したのである。
ヒマラヤ山脈には元々クマが多く生息しており、時には餌を求めて人家の近くにやってくることもあった。現地にはイエティを指す別名が多く存在しているのだが、その一部には凶暴なクマを指す呼称と一致しているものもある。つまり、現地の人々が十把一絡げに「毛むくじゃらで凶暴な生物」を指していたものを、何も知らない他所の人間が見て、「ヒマラヤに毛むくじゃらの人型生物がいる」と考えたものが未確認生物・雪男だったのだろうか。
研究チームは今回採取できたヒマラヤ山脈に生息するクマの遺伝情報から、その進化の歴史等に関する発見も行っている。未確認生物に対する研究が、実在する生物の謎を解き明かしていくのかもしれない。
(加藤史規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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