【実話怪談】水死の予言

 今から30年近く前にあった話と聞いている。東京の下町に一組の夫婦がいた。夫は粋な人形職人で、伝統人形の工房で腕を振るっていた。また、妻は質素ながらも、洒落た着こなしのできる良い女であった。

 二人の住む家はお世辞にも綺麗とは言えなかったが、妻の祖母の代から使われている日本家屋であった。時代がかった住まいに、ばりばりの江戸っ子夫婦は妙にマッチし、地元で評判のオシドリ夫婦であったという。

 だが、世の中そうそう上手くはいかないもの。仲が良すぎて神様が妬いたのか、不思議に二人の間には赤子が生まれてこなった。




「子供が欲しいもんだねえ、おまえさん」
「まったくだ、なんでおいらのとこには赤ん坊がこないんだ」

 いつしか、子供がいない事をなげくのが夫婦の口癖になっていた。
 ある時、日本橋の水天宮にお参りする事があった。二人はいつものように子供が授かるように必死に祈りを捧げた。
 すると、不思議な事に10ケ月後、二人には玉のような男の子が誕生した。

「さすが、水天宮さまだ、御利益があるぜい」
「本当ですね。退院したら、お礼参りにいかないと」

 夫婦の幸せはいつまでも続くかに思えた。
 だが、初七日の神社にお参りにいった帰り、街角に座る老人の占い師から不吉な予言をされた。

「かわいそうにのう、この子は7才までに水の難に遭い、死ぬだろう」

 その話を聞いた両親は顔色を変えて聞いた。

「どうっ、どうしたら、この子は助かるのでしょうか」
「そうさな~、水の難で死ぬんだから、私が親なら水、つまり、海やプールには連れて行かないよ。それしか方法はないね」

 この死の予言を恐れた両親は子供を海、川はおろか、プールや釣りに行くのも禁止した。
 また池がある公園で遊ぶ時には、母親が常に見張りにつく徹底ぶりであったという。




「どうして、僕はいつもこうなのさ」
「これも全ておまえの為なんだよ」

 不満を述べる息子に、両親は只々頭を垂れるばかりであった。

 しかし、ここまで厳重に注意したにも関わらず、息子は7才になろうとする頃、水死してしまった。
現場はあの愛すべき自宅であった。しかも、自宅の風呂や庭の池ではない。
なんと家庭の洗面所で死んでしまったのだ。

 ある朝、息子が顔を洗おうと、洗面所に張った水に顔をつけたところ、男の子の顔がすっぽりとはまってしまった。
 ちょうど、蛇口と洗面所の水うけの間にロックされる形で頭を固定され、わずか数リットルの水で水死してしまったのだ。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©写真素材足成

 

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