よく「事実は小説より奇なり」といわれるが、実際に推理小説のような謎に満ちた未解決の殺人事件は多く報告されている。
1922年3月31日、ドイツはミュンヘン近郊の村ヒンターカイフェックにて、一家6人が惨殺されるという事件が起きた。
この家には家長のアンドレアスを初め6人の人間が住んでいたのだが、まだ2歳のヨーゼフと女中のマリアを除く4人は納屋で殺害されていた。
前述の二人はそれぞれの寝室で殺害されていたのだが、納屋で発見された4人は状況から、一人ずつ納屋に呼び出されて順番に殺されていった事がわかった。凶器はつるはしのようなものであり、被害者は顔や体を複数回殴打されており、ほぼ即死だったと見られている。
現場となった屋敷を捜査していくと、不可解な点が複数みつかった。まず、この一家は資産家だったにもかかわらず現金等は手つかずのまま残されていた。そのため、金銭目的の強盗などではなく、怨恨などでこの一家に個人的な恨みがある者の犯行であると考えられた。
また、被害者が納屋に呼び出されて殺害されている事から、恐らく顔見知りによるものではないかとも推察された。更に、犯人が犯行後数日間この家に滞在していたらしい事も、家に残された数々の痕跡で判明している。
日本の世田谷一家殺害事件を思わせる犯行内容だ。
だが、この事件も遺留品や証拠が多く残っていたにもかかわらず、容疑者を絞り込む事ができず事件は迷宮入りしてしまった。
世田谷一家殺害事件の一家とは違い、この事件の被害者一家は全員問題のある人物で周囲とトラブルを起こしていて、村で孤立していたのだ。
家長のアンドレアスは吝嗇(りんしょく)家で村人との交流を好まず、彼の娘ヴィクトリアは夫を戦争で亡くして未亡人だったが、息子のヨーゼフを出産した。そのため、実の父親のアンドレアスとの間の子供ではないかとの噂があった。
またアンドレアスが家庭内で暴力をふるっていたという話もあり、村人達はこの一家をはハレ物に触るようにして扱っていた。そのため、快く思う村人も少なく捜査にも非協力的だった。
だが皮肉にも、このような村人達の行動のために容疑者が見つからないという事態に陥った。そして、最終的に警察は被害者らの遺体から首を切り、霊媒師に頼んで心霊捜査まで行ったが、効果はなかった。
結局、この一家殺人事件の犯人は判明せず、いまだに未解決のままとなっている。
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The Horrifying Unsolved Slaughter At Hinterkaifeck Farm
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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