海外のモンスターを上げていくと出て来るであろう有名なものが半魚人だ。凶暴な外見と性質で、あくまで創作や伝説の世界にしか存在しない。
江戸の流行作家・井原西鶴は若い頃、全国の不思議な話や伝説を集めて本にしていた。今風に言えば山口敏太郎の都市伝説本のようなものを西鶴は執筆していたのだ。その中に「西鶴諸国話」という本がある。同書には不気味な琵琶湖に纏わる話が収録されている。
かつて琵琶湖で水死した人が、奇妙な姿をした異形の連中と共に船に乗って帰っていた。水底にある竜宮はよいところだから一緒に行こうと多くの知人を誘って船に乗り込み、琵琶湖に消えて行った。不気味なことに一緒に行った人は誰一人帰らなかったという。
この西鶴が記録した話、ハリウッド映画の「コクーン」に 似てる点が気になる。宇宙人が人間に化けて理想の星に行こうといって人間を誘いだし、それっきり還ってこないという物語だが、あまりにも似ている。
琵琶湖には昔から湖底に何かが潜んでいると考えられていたようで、俵藤太の百足退治で登場する竜神の住まう竜宮、人魚などの水怪はもちろんのこと、多くの死人や幽霊も生前の恨みを抱えたまま水底に沈んでいるとされていた。
特に竹生島周辺には無数の鎧兜を着たままの武者の死骸が沈み、時には湖面に上がってくるといわれていたため、琵琶湖で漁業を生業としている者たちは竹生島周辺に網を仕掛けたり、漁をすることを避けていたという。
実は竹生島沖は琵琶湖の中でも最も水深が深く、水温も低い所となっている。そのため、この近辺に沈んだ遺体は冷たい水によって腐敗が遅れ、時には一部が死蝋化することもあったという。
琵琶湖周辺では姉川の合戦など戦国時代でも規模の大きな戦が何度もあったため、多くの遺体が流れ、沈むことになったのも伝説の成立に一役買っているだろう。これらの条件が重なり、ついさっき死んだばかりのような死体を引き上げてしまったり、浮き上がってくることが多かったため、竹生島沖での漁が禁忌とされたのではないかとみられている。
(加藤文規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)