「妖怪ウォッチ2」から登場した新しい妖怪にプリチー族の「ケマモン」がいる。ケマモンは主人公の祖母が住む「ケマモト村」の「ご当地妖怪」としてケマモト村のPRを行うために日夜頑張っているという設定だ。
ケマモンはその名の通り、熊本のご当地キャラクター「くまモン」のパロディーキャラクターではあるが、ゲーム中になんとホンモノのくまモンが登場しご当地キャラクターの先輩としてアドバイスを行うというイベントが発生する。ケマモンはくまモンの地元熊本に対する熱意、そして動きだけで全てを語る表現力に感銘を受け(妖怪の世界だけではあるが)ケマモト村のご当地妖怪として人気者になる、というのが大まかなストーリーである。
ゲームではホンモノのくまモンがいきなり登場するので、驚いた人も多いかと思うが「妖怪ウォッチ」はもともと熊本県および九州地方には縁の深い作品である。
なぜなら「妖怪ウォッチ」の制作元である株式会社レベルファイブは本社が九州は福岡県にあり、ゲームにも出てくるひょうたん池は福岡県の大濠公園 (おおほりこうえん)が元ネタであるとスタッフからも明言されているほか、「ケマモト村」は熊本県、人魚のいる港町「ナギサキ」は長崎県がイメージ元とされており妖怪ウォッチ研究にとって九州地方は欠かせない場所といえる。くまモンの特別出演も熊本をはじめ九州のPRのために一肌脱いだ、ということかもしれない。
さて、ケマモンは「ご当地キャラクター」ならぬ「ご当地妖怪」として登場するが、ケマモンのように地元に根付いてPRを行う妖怪キャラクターは数多い。ここではそんな健気な妖怪たちを紹介したい。
まずは和歌山県のご当地キャラクター「だるだる」は「だるだるま」の元ネタと思われる妖怪「ひだる神」がモデル。地元・和歌山の熊野地方に伝わる「妖怪・伝説・民話」をPRする活動を行っている妖怪キャラクターだ。また静岡県には妖怪ウォッチに出てくる「ぬえ」よりも可愛らしい「ぬえ左衛門」なる妖怪キャラクターがいる。頭が猿、体が虎、尻尾がヘビなのは妖怪ウォッチでも同じだが、しっぽの蛇は自我を持っており「マサオ」という名前が付いているという。これは静岡県にぬえを退治した伝説が残っていることからぬえをモチーフにした妖怪キャラクターが誕生したと思われる。
ほかにも妖怪たぬきをモデルにした東京都八王子市のたき坊、河童をモチーフにした墨田区のカッパのコタロウなど、妖怪伝承がある地域によってさまざまな妖怪キャラクターが誕生している。
そもそも妖怪とは人間が肌で感じた科学では解明できない疑問点や己の願望をイラストに描いた遊びの文化である。
日本古来からの妖怪たちは時代を超え、妖怪ウォッチに登場したり、ご当地キャラクターになったりして我々を楽しませてくれるのである。
(穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部 寄稿・ミステリーニュースステーションATLAS)