これは香川の友人から聞いた話です。
友人のおじいさんの弟、つまり友人にとっての大叔父さんは一人暮らしでした。生涯独身で子供もいなかったので友人を本当の孫のようにかわがってくれたそうです。その大叔父さんは若い頃、腕の良い漁師だったそうです。喧嘩っぱやく飲み屋で大立ち回りをやったり、朝まで飲み続けそのまま漁に行った事もあったそうです。
そんな豪傑だった大叔父さんも一度だけ心底震え上がった事があったそうです。それは大叔父さんさんがまた20代だった昭和の最初のころの話です。
ある夜の事、思った漁で成果が上がらず大叔父さんはむなしく帰路につきました。すると、真っ暗な海上でひとの声が聞こえます。
「おーい おーい」
何やら人を呼んでいるようです。ひょっとしたら、仲間の船が困った状態になっているのか、大叔父さんは声のする方に船を向けました。すると真っ暗な海に一隻の船が漂っています。
只ならぬ雰囲気です。何かあったのでしょうか。 大叔父さんがその船に近づきました。すると「ぷ~ん」と焦げた臭いが花をつきます。大叔父さんは、ゾッとしました。
船全体が焼き焦げています。そして、全身にやけどおった船員が数人うごめいています。その黒く焦げた人の形をしたものが叫んでいました。
「お~い お~い」
目玉だけが妙に白かったのが印象的だったそうです。あまりの怖さに大叔父さんは脱兎のごとく港まで訳も分からず逃げ帰ったといいます。
大叔父さんは恐怖のあまり、しばらく漁を休んだそうです。
その後もその幽霊船はそれからもしばしば近海で目撃されたと聞いています。
(聞き取り&構成 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)