妖怪

【怪談実話】死を呼ぶ子供

埼玉のある病院に入院していた人から聞いた体験談です。

その女性Vさんは内臓を煩い、1ケ月近く入院していました。同室の方とも仲良くなり気心もしれてきたある夜の事です。

夜中にふと目を覚ましたそのVさんカテーンの隙間から女の子が歩いていくのを見ました。同室に子供はいないはずです。他の部屋と間違ったのではないだろうか。その子の部屋に連れて行ってあげないといけない。Vさんはベットから起き上がるとその子の方に歩いていきました。

その子は窓際のおばあちゃんのベットからボールのようなものを取り出すと持っていこうとしていました。

「だめよ。返しなさい」

Vさんがそう言った瞬間その子は消えてしまったのです。




愕然とするVさんは朝までまんじりともできませんでした。その明け方、ようやくうつらうつらしてきたVさんは看護婦さんの(ばたばた)した物音に目が覚めました。

どうやら窓際のおばあちゃんの容態が悪化して亡くなってしまったらしいのです。昨夜の事もあり、Vさんはいやな予感がしたのですが、とりあえず仲の良かったおばあちゃんの死に心を囚われてしまいました。

それから1週間が過ぎました。夜中にVさんは不審な物音を聞いたのです。そっと起き上がってみるとある時の女の子がまた部屋にいるのです。今度は向かい側の、Vさんがお母さんと慕う人のベットにもぐりこんで、何やらごそごそやっているのです。

「あなた一体誰なの」

Vさんは思わず聞きました。その瞬間女の子はそのベットから丸い玉を取り出すと、にこっと笑い消えてしまったのです。

翌朝おばあちゃんの時と同じく、向かい側の友人は亡くなってしまったのです。あの子は死神だわ。間違いない。Vさんはそう思いました。

そして、それから3日目の夜の事です。Vさんは息苦しくなり目が覚めました。身体が動きません。金縛りという奴です。もうすごく胸が息苦しいのです。ふと自分の布団の上を見ると何やら人影があります。あの子です。友人達を死に追いやったあの女の子でした。

この死神め。Vさんは必死に女の子を睨み続けました。女の子は布団ごしに私の身体の中に手を入れ何かを探っています。またあの玉を探しているらしいのです。あれはひっとして魂ではないのだろうか、抜かれた人間はあの世に連れていかれるのではないだろうか。Vさんはそう考えました。




その時、女の子はにやりと笑うとVさんの胸の中から白い玉を抜き出してしまったのです。このままでは死んでしまう。みんなの分も生きてやる。Vさんは必死に金縛りをとき起き上がりました。負けてたまるか。Vさんは夢中で女の子につかみかかると、力まかせに白い玉を奪い返したのです。

すると女の子の姿は消え、Vさんは気を失ってしまいました。

退院した今もVさんは今も思います。あれが生命力というものなんだな、と。

(ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)