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放送テープが全て現存している最古の大河ドラマ「風と雲と虹と」

放送時期が古いドラマ作品などで、録画テープが失われてしまっているというような例は決して珍しいことではない。

テレビドラマ「どてらい男」や人形劇「プリンプリン物語」などは特によく知られており、これらは会社倉庫から一部発見されたり録画で残していた一般人の協力などを経て復元がなされている。これらのケースは、現在もなお全話が揃うまでには至っていないが、一方で偶然にも全話分が発見されたというものもある。大河ドラマ第14作『風と雲と虹と』である。

「風と雲と虹と」は、平安時代中期を舞台とした大河ドラマの中でも特に古い時代を扱っており、平将門を主人公に「平将門の乱」を描いたドラマとなっている。将門を演じるのは大岡越前でもお馴染みの加藤剛であり、彼の将門を演じたいという強い希望のもと、搾取される民衆のため権力に立ち向かう英雄の姿が繰り広げられた。

本作は、歴代の大河ドラマの中で全ての映像が残っている最古の作品でもあるとも言われている。とはいえ、はじめから温存された状態で保管されていたというわけではない。

本作の総集編については、1976年に本編が放送された2年後に東京12チャンネルで再放送され、DVDなどの商品化がなされている。しかし、本編のオリジナルは長きにわたって所在不明となっており、この総集編以外はもはや現存していないのではないかと言われてきた。

しかし、それからおよそ30年近い月日が流れたある日、NHKの倉庫から「風と雲と虹と」の全放送回をおさめた2インチVTRが保管されているのが見つかった。これにより、デジタル処理による修復が行なわれ、2007年には完全版DVDが発売されたのである。2018年に、主演をつとめた加藤が逝去し追悼番組が放映された際には、本作の最終回が流された。

因みに、大河ドラマで全話が残されていないのは、本作を除く第1作『花の生涯』から第15作『花神』までに及ぶという。その理由は、やはり当時高価であったテープの使い回しによる上書きだ。大河で最も古い時代を扱った作品が、全話現存されているというのも不思議な因果である。

【参考記事・文献】
https://www.nhk.or.jp/program/nhk-archives/back/nhk-archives1809.pdf
https://dic.pixiv.net/a/%E9%A2%A8%E3%81%A8%E9%9B%B2%E3%81%A8%E8%99%B9%E3%81%A8
https://dot.asahi.com/articles/-/11847?page=1
https://www2.nhk.or.jp/archives/articles/?id=C0110043
https://x.gd/OIiK6

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【文 黒蠍けいすけ】

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