『いじわるばあさん』は、長谷川町子の漫画作品。1946年から連載されていた『サザエさん』から20年後の1966年に週刊誌「サンデー毎日」で連載が開始され、1971年まで掲載されていた。
タイトル通り、人様に意地悪ばかりしている「いじわるばあさん」こと伊知割石(いじわるいし)と、それに振り回され、時に逆襲する人々の姿を描いた4コマ漫画である。
「サザエさん」の単行本初版が各15万部だったのに対し、初版26万部だったことから、「サザエさんよりも人気だった」作品とも言われ、のちにドラマ化やアニメ化もしている。ドラマでは特に、80年代に放送された青島幸男主演の、「いじわる」を漢字表記にした『意地悪ばあさん』が有名である。
主人公は、なにもしていない相手だろうと嬉々としていじわるをする筋金入りの意地悪であり、土管で寝るホームレスを土管の口にセメントで蓋をして閉じ込める、愛鳥週間ということで鳥の剥製技師を殴る、自動車事故を起こした人物に水と称して酒を飲ませて飲酒運転の罪を着せる、家事のビルから飛び降りた人の下に剣山を投げ込む、などなどかなり過激である。
一度死んだ時には、地獄の閻魔大王から「地獄では預かりかねる」と言われ、珍しく善行をつんだ際には天国の神様も「これっぽっちで大きな顔されてこっちにこられちゃ堪らん」と言い、来たら追い返すよう天使たちに命じる一幕もあった。
元々は、「サザエさん」で描いていたほのぼのとした日常劇を描くことに飽き飽きしていた長谷川が、ブラックユーモア満載の全く違う作品を描いてしまえということで誕生したのが「いじわるばあさん」だったという。
着想の大元は、1956年から雑誌「漫画読本」に連載されていた、アメリカの漫画家ボブ・バトルの作品『エゴイスト』(邦題「意地悪爺さん」)。こちらも同様、主人公の意地悪なじいさんが陰湿な意地悪を展開する漫画作品であり、「ばあさんのほうが迫力がある」ということで長谷川がばあさんバージョンで描き上げた。
因みに、漫画家ボブ・バトルという人物は実在しておらず、イラストレーターの伊坂芳太良(いさかよしたろう)が”外国人製作の海外漫画”という体裁で発表されたのが「意地悪爺さん」であるため、アメリカの漫画作品としても「エゴイスト」は実在していない。因みに、長谷川は作中でいじわるばあさんと意地悪爺さんを共演させたこともある。
余談だが、これまで何人もの人々がドラマやアニメで主人公のいじわるばあさんを演じてきており、青島幸男、8代目古今亭志ん馬、高松しげお、藤村有弘、野沢那智といった面々となっている。しかし、見ておわかりの通り、ばあさん役であるにもかかわらずほとんど男性が担当していた。
女性で主人公を演じたのは、2009年から11年にかけて金曜プレステージにて全3作放送されたスペシャル版にて主演をつとめた市原悦子ただ一人である。
【参考記事・文献】
・https://mugenmondana.seesaa.net/article/2023-09-16.html
・https://ameblo.jp/polyglotism/entry-12849812190.html
・https://tariho10281.hatenablog.com/entry/2023/02/28/235813
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【文 黒蠍けいすけ】
画像『いじわるばあさん 1巻』