「蠱毒」という言葉を聞いた事のある人は少なくないだろう。
マンガや小説などでたびたび登場するもので、古代中国にて「大きな甕の中に様々な毒虫を入れて戦わせる」というもので、最後に生き残った毒虫は一番強い毒を持っているのでこれの毒を使う・・・という描写がなされる事が多い。
だが、実際には「最後に生き残った毒虫を殺し、その魂魄を使役する」ものである(虫を使役したり毒を用いる場合もある)。
日本の事例で例えるならば、犬神や管狐などが近いだろうか。
虫の毒を飲ませるのはもちろん、虫を使役して相手を病気にしたり危害を加えるものなので、創作の世界に出てくる蠱毒と実際の蠱毒にはかなり違いがあるといえよう。
さて、蠱毒で虫たちのバトルロイヤルをさせると、まれに「金色の虫」が最後に残る事があるという。
これは「金蚕蟲(きんさんこ)」といい、見た目は金色のカイコの幼虫に似ている。この「金蚕蟲」は別名を「食錦虫」とも言い、高価な錦の織物を食べるそうだ。
「金蚕蟲」の糞は猛毒であり、金蚕蟲の毒にやられた人は何日も高熱を出し、最後には全身から血を噴き出して死ぬとされている。また、金蚕蟲によって殺された人の魂魄は金蚕蟲を遣わした人のもとに行き、死後も使役されてしまうと言われていた。
そのため、蠱毒の中でも「金蚕蟲」は使役する人に多くの財貨を運んでくると言われていた。
この「金蚕蟲」の毒にかかった場合は一週間程度で死に至るが、ザクロの根の皮など複数の漢方薬を煎じて飲む事で快癒したという。
しかし「金蚕蟲」に狙われた人も不幸だが、もっと不幸なのは「金蚕蟲」を使役する人の方であるという。日本の犬神や管狐もそうだが、この手の憑き物を使役すると多くの富を得られる代わりに、多くの犠牲も必要とするのである。
普通の虫のように殺す事はできず、「金蚕蟲」が生きている限り犠牲者と金蚕蟲が食べるための錦などを供えなければならない。少しでも餌が減ると金蚕蟲は飼い主の財産や家族、本人の命を食おうとするそうだ。
人を呪わば穴二つ、という言葉がある。蠱毒のような恐ろしい方法で人を呪い、財貨を得ようとする人にはそれなりのリスクとしっぺ返しが待っている、ということなのかもしれない。
(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
Paolo ZerbatoによるPixabayからの画像