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テレビドラマ「西遊記」の三蔵法師役は夏目雅子の予定ではなかった

三蔵法師が、孫悟空、猪八戒、沙悟浄のお供を引き連れ、妖怪悪鬼を退治しながら天竺へ旅をする物語である『西遊記』。

日本においては、最もポピュラーな作品の一つでもあり、ザ・ドリフターズが声の担当をした人形劇『飛べ!孫悟空』や、手塚治虫によって漫画化された『ぼくのそんごくう』など、映画、ドラマ、アニメ、ゲームを通じて多くの作品展開されてきた。

そして、日本で『西遊記』と言えば1978年から放送されていたテレビドラマが最も有名だ。堺正章をはじめとして、夏目雅子、西田敏行、岸部四郎といった錚々たる名優たちをメインキャストに、当時としては破格の10億円もの製作費を投じられた伝説的なドラマである。

NHK大河ドラマを裏番組に据えながらも高視聴率を記録した本作は、日中平和友好条約調印の年の放送ということから、中国でロケーションが行なわれたことも話題となった。

本作が後世の西遊記作品に最も強い影響を与えたのは、何と言っても夏目雅子を起用したことだ。それまで、三蔵法師は率いる仲間たちと同様男性が務めることが普通であった中、女性の夏目雅子が演じた反響は凄まじく、中性的で高貴な役柄にマッチしたことも相まって、その後の西遊記作品では三蔵法師役を女性が担当するといった例が多くなったと言われている。

当時は、僧侶役に女性を起用することや、夏目が一端のモデルにすぎないとみなされていたこともあり、批判的な声も多かったという。だが、悟空役の堺によれば、そうした前評判を覆すほどに演技が優れており、アドリブを入れてもすぐに返す優れた人物だったという。

余談だが、当時は堺、西田、岸部の間で、いかに夏目と二人きりになれるか、また抜け駆けを阻止するための静かな戦いが繰り広げられていたらしい。

しかし、この三蔵法師役ははじめから夏目が選ばれていたわけではなかった。当初、三蔵法師役として起用されるはずだったのは、なんと女形の五代目坂東玉三郎だったのだという。このことは、堺も長い間知らなかったことであり、大河ドラマ『麒麟がくる』で共演したことによって初めて本人から聞かされた内容だったとのこと。

坂東によれば、当時三蔵法師役でオファーがあり、はじめは「面白そうだ」と乗り気ではあったものの、堺、西田、岸部という演者のラインナップを見た途端にハッキリと断ったのだという。

詳しい事情は語られていないものの、断ったのは当時新進気鋭の女形であった坂東自身のプライドにあったのだろうか。いずれにせよ、彼がそのまま役を務めていたのであれば、三蔵法師役の女性起用はここまで浸透することはなかっただろう。

因みに、他の配役は予定通りであったのかと言えば実はそうではない。この西遊記は元々、若山富三郎が映画として企画したものだったと言われており、孫悟空役は若山、猪八戒役に大相撲の高見山大五郎、沙悟浄役に仲代達矢が想定されていたのだという。なお、2024年11月に西田が逝去したことにより、初代の西遊記メインキャストで残っているのは堺ただ一人となった。

【参考記事・文献】
伝説のドラマ「西遊記」 あの三蔵法師、本当は夏目雅子さんじゃなかった!? 堺正章が明かす裏話にとんねるず貴明もビックリ
https://www.zakzak.co.jp/article/20181204-A7S3PYTEMVOLJMYY3I4D6IL4PI/
堺正章『麒麟がくる』共演で知った“西遊記”裏話…三蔵法師役は坂東玉三郎が断り夏目雅子さんに
https://www.chunichi.co.jp/article/194927
三蔵法師役を断った坂東玉三郎さん
https://ameblo.jp/hanamizuki-521/entry-12653995747.html
堺正章が明かす「西遊記」三蔵法師の“もう一人の候補”中居正広「それも見たかった~」
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2020/01/10/kiji/20200110s00041000323000c.html

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【文 黒蠍けいすけ】

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