志村けんは、コミックバンドグループであるザ・ドリフターズのメンバーとして、また『8時だョ！全員集合』をはじめとして数々のバラエティ冠番組にてコントを演じ活躍した、日本で最後の正統派コメディアンとも称された人物。
ドリフの付き人を務めたことから始まり、元メンバーの荒井注と入れ替わる形で正式にドリフのメンバーとなった。当初は全く笑いが取れなかったが、故郷の「東村山音頭」によって一躍人気者となり、いくつもの冠番組を持つに至った。
2020年3月に新型コロナ感染による肺炎で逝去した際は、最年長であったいかりや長介が亡くなった次に最年少の彼が亡くなったことで多くの人々に衝撃を与えた。
彼を語る上で忘れられない出来事といえば、やはり死亡説であろう。日本国内において、有名人の死亡説は幾人も見られるが、その中でも特に「志村けん死亡説」は有名である。
彼の死亡説は1990年代後半ごろに流れ出したものであり、当時はテレビ局や新聞社に問い合わせが殺到するほどの騒ぎであったという。この死亡原因として語られる内容も様々で、「群馬県でゴルフ中に急性心筋梗塞を起こした」「ヘビースモーカーのため肺癌になった」「尾瀬を観光中に沼へ落ちて溺死した」「国道で交通事故を起こした」など、かなり多岐に渡っている。結局は、メディア取材に本人が直接「生きています」と答えたことで噂は沈静化することとなった。
この噂が広まった理由には諸説あり、「東村山近辺でのおくやみ欄」や「栃木の癌センターの入院患者」に彼と同姓同名の人物の名前があったということが語られているが、真偽のほどは定かではない。有力とされている説は、彼が出演する番組が『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』や『バカ殿様』など、ほぼ自身がメインとして出演する番組ばかりであり、ゴールデンタイムから深夜帯へ看板番組が移行したことや不定期の特番での出演という形で滅多にテレビで見かけないという状態が発生し、このことが死亡説に繋がったのではないかというものだ。
因みに、1992年に終了した『ごきげんテレビ』では、癌で余命3カ月を宣告されたが同姓同名の人物だったというコントが実際にあったという。時期は大きく違えども、このことも噂の形成に少なからず影響を与えた可能性もあるのかもしれない。
ところが、彼が亡くなって以降、今度は全く正反対の「生存説」が新たに囁かれるようになった。
志村けんが実は今も生きているというこの奇妙な説は、彼が入院中に誰も直接連絡が取れておらず、最期の姿も確認できていないということで広まったとされている。コロナが蔓延していたこの頃、感染予防のために外出をはじめとして対人接触が避けられていた。このことが、彼の最期を確認できなかった大きな理由でもあったが、その間メディアにおける経過報告も錯綜しており、確認の連絡を取るにも困難であった状況下であった。
彼の生存説は、このコロナウイルスと強くリンクされた形で語られている。この時期、彼がたびたび豪遊していたという夜の街から、彼が懇意にしていた女性たちが次々と姿を消しているという奇妙な噂も流れていた。そのため、志村けんは女性たちを連れて海外へ暮らしているというような都市伝説も生まれたという。
これも、コロナウイルス蔓延に伴う不要不急の外出が控えられていた事情が女性たちの消息不明話につながったとされている。
さらに、小池百合子都知事が彼の訃報をもとに、「(志村けんの)”最後の功績”も大変大きいものがある」と発言したことも一部で疑惑を呼んだ。一説では、志村けんへ死の偽装を依頼し、都民にコロナの恐ろしさを知らしめそうとしたのではないかとも言われた。「最後の功績」とは、つまり「我々に協力してくれた」ことを指しているのではないかというわけだ。
ともあれ、志村けん生存説は、強く思い入れの残った人々の、「いつまでも心の中で生き続けている」という強い思いに伴う願望が生み出したものであると言えるだろう。死亡説にせよ生存説にせよ、彼が人々から厚く親しまれ愛されていたことはゆるぎない事実である。
【参考記事・文献】
死亡説
https://dic.pixiv.net/a/%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E8%AA%AC
志村けんの本名や生い立ちは？下積み時代や死亡説から現在までの軌跡
https://lovely-media.jp/posts/14978
【デマか真実か】志村けんの生きてる説を検証…死因はコロナじゃない？！
https://x.gd/W8vj1
志村けん「生きてる説」浮上？写真や証拠で「しんでない」5つの理由
https://nobiciro.com/person/29489/
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【文 ナオキ・コムロ】
