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切られた魚も泳ぎ続ける…あり得ない描写!元祖・料理バトル漫画「包丁人味平」

包丁人味平は、1973年から77年かけて『週刊少年ジャンプ』で連載されていた、牛次郎・原作、ビッグ錠・作画による料理漫画。料理勝負やその解説といった「料理漫画」の様式を確立したパイオニア的作品として知られている。1986年には、月曜ドラマランドでドラマ化されており、主人公の塩見味平は木村一也、その父親の松造は実際に木村の父親である漫才師の横山やすしが演じていた。

主人公味平は、一流料理店の板前である父を見て育ってきたが、高級料理ではなく庶民でも味わえる大衆料理への興味を抱くようになっていった。父親の反対を押し切り、街の小さな洋食屋で見習いコックの修行を始めるが、トラブルによって「包丁試し」という勝負を受けることになり、そこから次々と料理勝負に挑むことになって行く。これが本作の大まかなあらすじとなっている。

先にも述べた通り、本作はこのジャンルにおいては史上初ともいえる作品となっており、また単なる料理を披露するのではなく、『美味しんぼ』や『ミスター味っ子、』近年では『食戟のソーマ』などで定着している”バトル”の展開を用いた料理漫画としても元祖の地位を得ている。

斬新な一品なども見られ、アイスクリームを壺状に形作ってその中にジュースを入れて蓋をし、フライにするという「アイスクリームの壺あげ」、いわばアイスクリームのフライは、多くの読者を驚かせ、また魅了したものであった。反面、本作内では「化学調味料は悪」という価値観があり、化学調味料を使用したことで勝負が失格となっている描写もあり、このことを信じた読者も少なくは無かったようである。いずれにせよ、少年たちの食に対する関心を変えた作品の一つとなったことは間違いない。

ただ、料理漫画という点では、本作がジャンプ連載であったことに留意が必要であり、本作内での料理バトルの内容は料理の味を競うというよりも、どちらかといえば料理人としての技術に主眼が向いていた。そのため、料理に関する批評や蘊蓄はあまり見られず、技比べという勝敗がわかりやすい部分での要素が強く出されていた。さらに、対決を通じて味平が人間的に成長して行くというのも、王道と言うべき展開である。

その一方で、料理というジャンルにバトルを持ち込んだことによる弊害もある。出血したまま調理を続行したり、隠し味に汗を使うなど現在の衛生観念からはたちまち一発アウトを食らうような描写も散見されているのは、ご愛嬌といったところだろうか。

本作で展開されている対決やその技術にもツッコミどころが多く散見される。包丁の技術を競い合う包丁試しにおいて、「水面浮き島切り」というものが項目の一つとしてあげられていたのだが、これは水に浮かべたキュウリを波立たせることなく切るというあまりにも現実離れしたものであり、さらには、タコ糸一本で豚肉一頭分を区分けもされながらバラバラにする「白糸バラシ」や、黒ひげ危機一髪のように包丁をあちこちに刺して、最後に火薬で爆発させて解体する「地雷包丁」といったものまである。

そもそも、味平の父・松造が作る活造りも、胴体が骨だけになった魚を水槽に入れると泳ぎ出すというような描写がなされており、やはり全編を通して異次元の技術を持った料理人が多々登場するのは、バトル漫画ゆえのテイストだろう。

因みに、身を切り取られて骨をあらわにした魚を泳がせる「骨泳がし」と呼ばれる技は実在している。ただし、漫画の中で描写されているような頭と尾びれを残した状態ではなく、三枚におろししてまだ身自体が多く残っている状態であることが必須である。これは、料理人の腕を披露する場面においては、たびたびメディアでも取り上げられている。

【参考記事・文献】
昭和の名作料理マンガは、実は史上初の〇〇〇マンガだった!
https://kanamari.com/archives/1745/
料理漫画の元祖と言ってもいいかもしれない包丁人味平という内容もぶっ飛んだ漫画について
https://jouhousaga.com/kitchen-knife-ajihei#toc3
【包丁人味平】の感想とあらすじ、これぞ元祖「料理漫画」料理で競う発想はここから始まった。
https://mangamusou.com/shohyo/ajihei/
包丁人味平で学んだ、今でも信じているナゾ知識
https://matanki.com/post-718/#st-toc-h-4
包丁人味平を読んで、今でも実際にやっていること
https://matanki.com/post-746/

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【文 ZENMAI】

画像『包丁人味平 5 点心礼闘六味編 (SHUEISYA HOME REMIX)