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漫画家「江口寿史」を休載に追い込んだ白いワニ

江口寿史は、漫画家・イラストレーターとして活動する人物であり、週刊少年ジャンプに連載していた「ストップ!!ひばりくん!」「すすめ!!パイレーツ」などが代表作として知られる。

彼が個人的に使用していた「ぶりっ子」という言葉は、自身の作品を通して世に広まり80年代の流行語にもなった。

デビュー後、2作目に執筆した「すすめ!!パイレーツ」は、当時まだ熱血のスポ根が主流であった野球を題材にしながらも不条理ギャグとして描いたことが大きな反響を呼びヒット。1981年に連載を開始した「ストップ!!ひばりくん!」は、一見美少女にしか見えない主人公が実は男であるという、当時としてはあまりに異色の設定であったにもかかわらず、アニメ化がなされるなど彼の最大のヒット作となった。

「ひばりくん」は、時代を先取りしすぎた、これによって数多の読者を目覚めさせた、とまで言われるが、連載開始から2年後の1983年に連載を中断してしまう。本作を連載して以降、彼は筆の遅さが目立つようになっていき、ネタ切れに長く苦しめられるようになっていったと言われる。

「Hunter×Hunter」「幽☆遊☆白☆書」の作者として知られる冨樫義博も筆の遅さでは非常に有名であるが、両者は漫画連載に対して非常に厳しいジャンプからも破格の厚遇を受けている身という点で共通しているものの、一つの作品の執筆を続ける冨樫と異なり、江口は連載作品を中断あるいは放棄して別の作品を執筆し始めてしまうことが多かったという。

「ひばりくん」は未完として永らく中断されていたが、のちに書き下ろしを加えた完全版コミックスが発売されたことで無事完結を迎えることになる。発売は2010年、最後の雑誌掲載から実に27年の年月を経ての完結となった。

ところで、こうした彼の”遅筆”にまつわるエピソードの一つに「白いワニ」がある。白いワニと言えば、アメリカで最も有名な都市伝説の一つとして知られるニューヨークの下水道に生息すると言われる白いワニ、通称「ホワイトアリゲーター」が思い起こされる。

ペットとして飼われていたワニが下水道に捨てられ、その後日の当たらないかつ劣悪な環境によって視力と体の色素が失われ、現在も密かに繁殖を続けているといういわばUMAとして認知され、ニューヨークでは彫像が設置されるほど地元に根づいた存在となっている。

原稿を落として休載を繰り返していた江口は、その釈明としてたびたび「白いワニ」について言及していたという。無論、これは先述の都市伝説とは無関係であり、いわゆるネタが思い浮かばず真っ白なままの原稿を指して比喩的に言い表したものであった。これによって、「白いワニが来た」「白いワニに噛み付かれて重傷を負った」などの理由がつけられ休載をよぎなくされるに至る。

これにより、現在でも江口寿史といえば白いワニを連想するかつての読者も多く、またアニメ『こち亀』では話の展開で下水道に入ると必ずといってよいほど白いワニが登場しており、これは同じジャンプ作家であった江口になぞらえた描写だったとも言われている。

読者にとって白いワニは、恐怖の対象というよりは続きが見られないにっくき存在として心に刻まれているようである。


【参考記事・文献】
アニメのこち亀で下水道に入ると
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10151536755
白いワニが来る!
https://himekagura.hatenablog.com/entry/20090515/p3
江口寿史
https://dic.nicovideo.jp/a/%E6%B1%9F%E5%8F%A3%E5%AF%BF%E5%8F%B2
ストップ!!ひばりくん!
https://x.gd/g4PAh

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【文 黒蠍けいすけ】

画像 ウィキペディアより引用