赤塚不二夫著作『天才バカボン』は、不条理かつブラックな内容で知られるギャグ漫画。主人公であるバカボンよりはそのパパのほうが活躍し有名になっている一風変わった作品であるが、「これでいいのだ!」というフレーズと共に幅広い世代にわたって知名度の高い人気作品となっている。
この「天才バカボン」は、仏教に関連しているのではないかとの説がある。
最大の理由は、バカボンの名前が「薄伽梵」(ばがぼん、ばぎゃぼん)に由来しているというものだ。薄伽梵とは、サンスクリット語の「バガヴァーン」あるいは「バガヴァット」を漢訳させた言葉であり、「仏の尊称」と説明されている。すなわち、悟りを開いた者=ブッダと同義ということになる。この話は、かつて『トリビアの泉』の中でも紹介された。
バカボンの名前の由来については、かつて赤塚不二夫公式サイト「これでいいのだ!!」にて選択式の設問で出されたこともある。その際の選択肢は、韓国で馬鹿なボンボンを意味するバカボスミダ、フランス語で放浪者を意味するバガボンド、イタリア語で「これでいいのだ」を意味するバカボンドーラの三択が上げられていたものの、仏教についての選択肢は無かった。
では、この説はいわば都市伝説に過ぎないのかと問われると、これもまた微妙。赤塚が死去後の毎日新聞(2008年8月26日付)「記者の目」の記載によると、赤塚が「仏の言葉にバカボンという言葉がある」「煩悩を超えた徳ある存在」という旨を同紙の記者に語ったという。
記者は、それがバカボンの由来かと聞き返しても赤塚は結局返答しなかったようで真相は不明であるが、少なくとも赤塚が「薄伽梵」の言葉と意味を知っていたことは確かである。
この他にも、「天才バカボン」には仏教由来の設定が存在している。
例えば、常に箒で掃除をしていることでお馴染みのレレレのおじさん。5つ子5組で計25人の子供がいた彼は、その子供たちを移動させるために箒で掃くようになったことがきっかけであるというキャラクターである彼には、モデルになった人物がいると言われている。
その人物とは、釈迦の弟子であったチューラパンタカ(周利槃徳)という人物だ。ある時、彼が自分の愚かさに苦しんでいることを釈迦に伝えたところ、得意なことを聞かれて「掃除です」と答えた。釈迦は彼に一本の箒を渡して掃除をするよう説いた。
以来、チューラパンタカは来る日も来る日も掃除を続け、数十年経ったころに「真に払うべきは己の中の塵埃だった」と悟ることができたという。おわかりの通り、常に箒で掃除をし続けるその様はレレレのおじさんそのものではないだろうか。
この他にも、バカボンの弟である天才児「はじめ」は、その名が仏教研究の泰斗である中村元(なかむらはじめ)からきている、バカボンのパパの「これでいいのだ!」は、あるがままを受け入れる悟りの境地を意味する、といったものが上げられている。
なお、バカボンのパパがこの世に生を受けて最初に言った言葉は「天上天下唯我独尊」(自分という固有の存在はただ一人ゆえにあるがままの姿で尊い、の意)だ。
こうしてみると、「天才バカボン」に散見される仏教的要素は多く、赤塚の仏教への深い造詣が伺える。因みに、赤塚がトキワ壮に入居していた頃、彼の入居していた部屋の前の住人は手塚治虫だったという。その手塚治虫の作品の一つに、仏教の開祖ブッダの生涯を描いた名作『ブッダ』があるというのも因果な巡り合わせだ。
【参考記事・文献】
天才バカボンの作品の意味には仏教が関係してたって本当?
http://arthiro.net/%E3%80%8C/meaning-of-bakabong#i-2
『天才バカボン』と仏教の意外な関係 主人公の名前にも「謎」が
https://magmix.jp/post/182442
バカボンはお釈迦様のこと
https://yakushiji.or.jp/column/20220808/
バカボンと仏教
https://shoshinji.com/cate-bupposhow/1651/
あの有名キャラ、元祖はお釈迦様?
https://x.gd/QtFII
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