人間は亡くなったあとは現世とは別の世界、死後の世界に行くという考えは世界各地に残っている。
日本でも「黄泉の国」として伝えられており、古事記などの記紀神話の記述によれば「黄泉比良坂」で現世と繋がっているとされている。
現代では黄泉の国は地下にあると考えられがちだが、古事記の記述によれば「逃來猶追到黄泉比良坂之坂本時(訳)逃げ来るを、猶ほ追ひて、黄泉比良坂の坂本に至りし時)」となり、この「坂本」が坂の下ないしは登り口を指すことから、黄泉の国は必ずしも現世の地下に存在するわけではない事がわかる。
また、黄泉の国には現世に近い所に「根の堅州国(根の国)」があるともされており、根の国と黄泉の国を同一視しない場合もあるため、現在では当時の支配圏の外に程近いところを「根の国」と呼び、そこに穢土としての「黄泉の国」が存在したのではないかと考えられている。
文献研究の結果、この黄泉の国は現在の島根県東出雲町揖屋の揖夜神社(伊布夜神社)から南東二キロの平賀(ひらか)地内が相当するとされており、黄泉比良坂は同地区の伊賦夜坂ではないかと考えられている。
また「出雲国風土記」では「出雲郡宇賀郷の北ツ海に面したところ」に黄泉の国に通じる穴が存在するとあり、これは現在の出雲市猪目(いのめ)町の猪目洞穴とされる。
出雲国風土記によれば「夢でこの洞穴を訪れたら必ず死ぬ」と記されており、発掘調査の結果、洞穴からは弥生〜古墳時代の人骨が十数体出土したという。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
Karin HenselerによるPixabayからの画像