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河童が化けた妖怪?「とうふなめ」と豆腐小僧・一つ目小僧の関係性

豆腐小僧とは、子供の姿をした妖怪の一種である。頭に笠を被り、その手には豆腐を乗せた盆を持つ姿は、江戸時代の草双紙から描かれるようになり、幕末から明治にかけて玩具絵として多く登場し親しまれた妖怪。

民話などにおいて見られないことから、豆腐小僧は伝承に見られるものではなく創作された妖怪であると考えられている。そして、この豆腐小僧に似た存在して「とうふなめ」という妖怪がいることはご存じだろうか…

とうふなめとは、19世紀から20世紀前半にかけて活躍した画家の小川芋銭(おがわうせん)が描いた妖怪である。芋銭が手掛けた俳誌ホトトギスにも表紙に描かれたことがあり、また俳人としても活躍していた彼の作品の一つとして、「とうふなめに ばけるかつぱや 五月闇」という句にも詠まれている。

芋銭は、魑魅魍魎に強い関心を持ち、特に河童の絵を多く残したことでも知られている。この句にあるように、とうふなめとは河童が化けた存在であることが設定として見受けることができるだろう。

とうふなめが豆腐小僧と同様の存在であるとすると、豆腐小僧も河童が化けたものと捉えることもできるかもしれない。しかし、ことは少々複雑である。

ポピュラーな妖怪の一種に「一つ目小僧」というのがいる。誰もが見聞きしたことがあるであろう一つ目小僧は、豆腐小僧と同様に江戸時代の随筆などに多くその名が登場する妖怪だ。突然現れて驚かすという以外に害を与える描写はほぼ無く、無害な妖怪として玩具絵などでも愛嬌良く描かれることが多い。

不思議なことに、江戸時代にたびたびイラストで登場する一つ目小僧は、笠を被って豆腐が乗った盆を持つ姿であることが非常に多く、ほとんど豆腐小僧と同一と言って良いほどだ。また、豆腐小僧には雨の降る夜に人の後をつけて歩くというほぼ害のない特徴を有しているが、この無害さも一つ目小僧に通じるものがある。

そもそも、なぜ豆腐を持っているのかについてもハッキリとはしていない。豆腐は、その原料がいわゆる「豆」すなわち「魔滅(まめ)=魔を滅する」に通じることから魔除けのアイテムと考えられている。そう考えると、妖怪とあろうものが自ら魔除けのアイテムを有しているというのも不思議である。

しかし、これについては「ベか太郎」という妖怪の例にも言える。両目の下瞼をめくって舌を出すアカンベーの顔をするべか太郎も、瞼の裏側や舌という普段隠れた部分を表に出すこと、さらに赤色をした部分を見せつけるということ、それらが魔除けの意味を持っていると言われている。

実は、豆腐を持った一つ目小僧には、舌を出して描かれているものも非常に多い。中には豆腐を舐めているような描写のものもある。舌を出すという豆腐以外の魔除け要素が追加していると同時に、一つ目小僧という描写の中で既に「とうふなめ」の片鱗が見えている。

これらのことから豆腐小僧や一つ目小僧は、単に妖怪ということではなく、魔除け要素を強調させた現在で言う擬人化として描かれたキャラクターであるとも考えられる。とうふなめは、そうした豆腐小僧や一つ目小僧の要素を引き継いだ派生的な存在であったと言えるかもしれない。

【参考記事・文献】
第二百二十夜 小川芋銭の「五月闇」の句
https://miho.opera-noel.net/archives/1238
豆腐小僧(とうふこぞう)
https://youkaiwikizukan.hatenablog.com/entry/2013/02/07/153740
3-豆腐小僧 ~江戸時代の豆腐小僧及び類似の妖怪~
https://kihiminhamame.hatenablog.com/entry/2021/09/30/223000

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【文 黒蠍けいすけ】

画像 ウィキペディアより引用