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戦死した弟への思いが生み出した名曲?「アンパンマンのマーチ」特攻隊起源説

1969年に発表されて以降、現在も子供たちをはじめとして多くの人々が親しむ、故やなせたかしの生み出した作品・キャラクターであるアンパンマン。

元々は大人向け雑誌において、人間の顔をした空腹の人にパンを届けるキャラクターとして描かれていたが徐々に子供たちの間で人気を集めるようになり、1979年にはアニメがスタート、こんにちに至るまで劇場版も含め放送され続けている長寿アニメの一つとなっている。

最もキャラクターの多いアニメ作品として、ギネス記録にも認定されている作品だ。

多くの人々はアニメ「それいけ!アンパンマン」の印象が最も強いことだろう。それと同時に、オープニング主題歌「アンパンマンのマーチ」は、誰もが一度は耳にしたことのある曲であるとも言えるかもしれない。

作曲は三木たかし、作詞したのは作者であるやなせたかしだ。

アンパンマンの歌詞は、「愛と勇気だけが友達さ」がたびたびネタ的にも解釈され引用されるが、「なんのために 生まれて なにをして 生きるのか」「そうだ うれしいんだ いきるよろこび」といったように、一見子供向けとは思えないようなものが目に付く。

そんなアンパンマンのマーチの歌詞は、作詞をしたやなせたかしの戦争体験が元になっていると言われている。戦時中、やなせたかしの弟が特攻隊に志願し、その後戦死しており、特攻隊として散った弟への思い、そして反戦への意味を込めたのがアンパンマンのマーチの歌詞だという。

「いきるよろこび」「なにをしていきるのか」「なにがきみのしあわせ」といった生きることへの問いや思想が強く表れているのには、そのような事情があったというわけだ。アンパンマンのマーチは、弟、ひいては特攻隊を歌った曲だったということになる。

しかし、この話については少々怪しい部分があるのも事実だ。実際、やなせたかしの弟が特攻隊で戦死しているのは事実であり、そのことは当人も証言している。その弟の戦死が彼の思想や活動に多大な影響を与えたことも確かであろう。

しかし、その弟を意識してアンパンマンのマーチの歌詞を手掛けたという点についてはどうか。

実のところ、彼は自著『ぼくは戦争は大きらい』(2013)において、この”噂”について言及しており、「そんなつもりはなかった」と言っている。

ただし、これは意識して書いたということの否定であり、潜在意識においてそういった心情が少なからず影響していたという可能性も考えうることである。ハッキリ言えるのは、アンパンマンマーチが特攻隊を歌ったものと断定することはできない。

アンパンマンが、当初から飢えた人へパンを届けるという設定を有しているのは、確かに戦争体験も強く影響していたであろうことは考えられる。それに加えて、特攻隊で散った弟の存在。アンパンマンのマーチ“特攻隊起源説”を形成する要素は、実際多く存在しており、たびたび指摘されるアニメの最終回都市伝説などに比べて、一つの物語として形成されるには十分すぎるほどであったといえる。

【参考記事・文献】
「アンパンマンのマーチ」は特攻隊の歌ではありません
https://www.ne.jp/asahi/niko/pink/yanase.html
アンパンマンマーチの歌詞は実は深い?本当の意味を考察【やなせたかし】
https://bibi-star.jp/posts/8970
「『アンパンマンのマーチ』は特攻隊の歌だった説」を検証してみると
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/11291115/?all=1
アンパンマンの原作と戦争体験
https://utaten.com/specialArticle/index/6905

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【文 黒蠍けいすけ】

画像『アンパンマンのマーチ