世間、そしてネットも震撼させた「西鉄バスジャック事件」と犯人「ネオむぎ茶」

西鉄バスジャック事件は、2000年5月3日に福岡・天神行きの西鉄高速バス「わかくす号」にて発生したバスジャック事件。17歳の少年によって数名の死傷者を出した衝撃的な少年犯罪の一つとして知られており、当時まだ浸透していなかったインターネットでの犯人の書き込みが大々的に注目された事件でもある。

この日、22人の乗客を乗せて走行していたバスの車内で、少年が刃渡り40cmの牛刀を持って運転手・乗客たちを脅しバスを乗っ取った。彼は乗客の一人であった6歳の少女を人質にとり、また眠っていた女性を斬りつけて負傷させるに至った。そして「あなたたちが行くところは天神ではありません。地獄です」と、少年は淡々として乗客たちに宣言。

その途中、トイレ休憩によってバスは停車されたが、そのうち乗客の一人がそのまま逃亡したことで激昂、乗客の一人をついには殺害。なお逃亡した乗客の通報によって山口県警が緊急配備を発令、福岡県警も300人態勢の捜査本部を設置した。

以後、数度に渡って乗客が数人ずつ解放されていったが人質の少女だけは手放さず、21時37分ごとにバスが広島県の小谷サービスエリアに停車しそこから膠着状態に。そうして翌朝5月4日午前5時3分、人質の少女が犯人の手元を離れた隙を見て特殊急襲部隊SATが突入し、犯人の少年は逮捕されることとなった。

本事件は、バスが山口県に入った頃から次第に生中継されたことも相まって、日本のバスジャックにおいて初めて死者が出た事件であるほか、SATの出動、そして冒頭でも述べたように犯行前インターネットで書き込みを行なっていた、といったことが事件後に取り上げられたことで話題となった。

なにより、犯人の少年が、神戸連続児童殺傷事件の酒鬼薔薇聖斗と同い年であったこともあり、「キレる17歳」がフレーズとして誕生する一端にもなった。

犯人の少年は、中学時代からいじめを受けるようになり、その鬱憤をぶつけるように家庭内暴力が増えていくようになったという。中学3年の1月には、腰椎を圧迫骨折するという大怪我を負った。また、なんとか入学した高校もわずか9日で不登校となり、1年ほどで自主退学。

そして自宅に籠りがちになった彼は当時開設されたばかりのインターネット大型掲示板「2ちゃんねる」にのめり込むようになり、コテハン(固定ハンドルネーム)「キャットキラー」名前で書き込みを行なっていた。しかし、コテハンを使った書き込みやその挑発的内容から掲示板内でも疎まれるようになり、その孤独感はより深刻なものとなっていったようだ。

2000年3月、家族が彼の自室から犯行声明やナイフなどを発見したことで国立肥前療養園に措置入院。入院中の彼は非常に穏やかであったが、内心は入院を決めた家族に対して強い怒りを募らせていた。

そしてその年の5月1日、17歳の少年によって老夫婦が襲われ女性が殺害されたという「豊川市主婦殺人事件」を知って、これを称賛する手記を残したが、この事件がバスジャックを起こす決定的なきっかけとなったという。

事件発生当日、2ちゃんねるにて「佐賀県佐賀市17歳・・・。」というスレッドが立ち、最初に「ヒヒヒヒヒ」とだけ書き込まれた。書き込み主は「ネオむぎ茶」とコテハンで名乗っており、少年が「キャットキラー」から改名した名前であったことから、犯人を称して「ネオむぎ茶」、加えて事件の通称が「ネオむぎ茶事件」と呼ばれるようになった(各所で誤表記がたびたび見られるが、正しくは「むぎ」はひらがなである)。

余談だが、この「ネオむぎ茶」という名は、当時の2ちゃんねるにおいて頻繁に荒らし行為をしていた「むぎ茶」というコテハンの人物がおり、この名前を模倣して「ネオ」(新の意味)をつけた名前であると言われている。周囲から孤立していった彼が、最後の救いの場所になるはずであったネット空間までも爪弾きにされてしまったことの行きついた心境が、この「荒らし行為で嫌われた人物の名前」を模倣する形で表れていると思うと遣る瀬無いものだ。

その後の少年は消息不明であるが、出所していることは確かであるらしい。獄中結婚をしていたという噂もあるが定かではない。少年の家族は今なお、バスジャックの被害者に賠償金を支払い続けていると言われているが、出所した彼もそうした形で罪を償い続けているのだろうか……そうであって欲しいものである。

【参考記事・文献】
『平成日本凶悪犯罪大全』

西鉄バスジャック事件の犯人「谷口誠一」の現在は？その後の行方も紹介
https://rekisiru.com/24998
谷口誠一(ネオ麦茶)の現在！西鉄バスジャック事件の犯人の顔写真や動機・家族やその後まとめ
https://newsee-media.com/nishitetsu-bus-jack
西鉄バスジャック事件の犯人「谷口誠一」の現在は？その後の行方も紹介
https://rekisiru.com/24998

【アトラスニュース関連記事】
都市伝説『黒マントのサカキバラ』がやってくる