かつて栃木県にあった小山遊園地のCMソングを元にしたギャグ「小山ゆ~えんちぃ~」で一躍有名となったコメディアンといえば桜金造(因みに小山遊園地のCMソング作曲はキダ・タロー)。俳優としても活躍する一方、それらと並行して怪談の語り手としても知られている人物である。
その彼の怪談の中に、幽霊の出るような話とは毛色の違う、「同じタクシーに4度も遭遇した」という話がある。
それは、ある時期のわずか一週間の間に起こった出来事。彼がある日タクシーへ乗り込んだ時、その運転手から「また乗りましたね」と声を掛けられた。彼は覚えていなかったのだが、運転手によるとその2日ほど前に桜金造がどこから乗ったかということを覚えており、そこで二人は盛り上がったという。
しかし、なんとまた近いうちにその運転手の同じタクシーに当たってしまった。この時は、さすがに両者とも気味の悪さを感じ、話が盛り上がることはなかったという。
元々彼はタクシーをそこまで利用するタイプではなかったらしいが、それにも拘らず、しかもそのような短期間で3度も同じ運転手のタクシーに当たってしまったというのはあまりにも不可解であった。
3度も同じタクシーに乗り込んだ彼であるが、そのいずれも異なる場所からの乗車であったというのが余計に事態を困惑させる要因となっていた。
だが、これで終わってはいなかった。
その日、赤羽ゴルフ場で撮影をしていた彼は、終了後帰宅のために駅までタクシーを使おうとしていた。タクシーはやって来たが、一瞬止まったものの乗車拒否をして去って行ってしまった。
そのタクシーがどこのかを見たところ「株式会社秀和タクシー」とあったが、実はそのタクシー会社は彼が3度乗ったタクシーで確認した社名と同じであった。そして、一瞬見えたその運転手もあの同じ運転手だったという。
ここまででも十分に不思議な話ではあるが、この話には後日談があった。
4度目の遭遇から数日経ったある日のこと、彼のもとに一本の電話がかかってきた。それは彼の友人の兄であり、なんとその友人が亡くなったという訃報であった。]
詳しく事情を聞いてみると、その友人は長距離トラックの運転をしていたが、ある時に沖縄へ移って職を変え、その後、風邪をこじらせた末に亡くなってしまったという。驚くべきことに、その友人が沖縄でやっていた仕事がタクシー運転手だったという。
だが、さらに恐ろしい事実に彼は気づいた。
その友人の名前は、実は4度遭遇したタクシー会社の名前と同じ字で「秀和」だったという。のちに、自身が出版する本の打ち合わせを行なっていた際に、編集者がくだんのタクシー会社について調べると、「株式会社秀和タクシー」が存在しないということもわかった。
亡くなった友人は、テレビに映る桜金造を見るたびにまた会いたいと呟いていたという。
これは、離れた土地でタクシー運転手をしていたその友人の思いが引き起こした虫の知らせ、あるいはシンクロニシティであったのだろうか。その強い念が、存在しないタクシー会社をも生み出してしまったというのは、非常に興味深い話である。
【参考記事・文献】
タクシーの怖い話『同じタクシー』|人間の本当にあった怖い話
https://coredake.com/taxi-storys-4/
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