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南極海に出現したオランダサイズの大穴「巨大ポリニヤ」

いまだに多くの謎に満ちた南極。都市伝説などが後を絶たない南極で、近年最も研究者たちを困惑させたとある現象があった。

2017年9月中旬、南極海の海氷に覆われた海域の中に巨大な穴が現れたのが報告された。その大きさは、規模にしてオランダに匹敵するほどの面積であり、人工衛星による観測が始まって間もない頃の1974年に、ほぼ同じ場所で観測された巨大な穴(のち1976年には閉じたらしい)以来、実におよそ40年ぶりとも言える出来事であり、これまで観測された穴の中でも最大級のものであったという。

このような穴は、氷に囲まれた開水面や薄氷域のことを指し、また自然の氷穴を表す言葉として「ポリニヤ」と呼ばれている。この現象は周囲を氷で囲まれた状態となり、一旦穴が空くと海水が大気に触れ続けるため、新しい氷が形成されにくくなるのだという。

1974年に、最初に発見されたのちに穴が閉じ、それが再び開いたということについて疑問が持たれているが、そもそもこれまでこうした巨大ポリニヤの形成自体、そのメカニズムがハッキリと解っておらず、海洋の哺乳類たちが呼吸する場所として使用するだろうと言及されるに留まっていた。

だが、2024年5月になって、その謎がとうとう解明されたかもしれないという一報が舞い込んできた。衛星画像、最新の計測機器、帽子をかぶったアザラシなどによって導き出されたモデリングは、通称「エクマンスパイラル」と呼ばれるものであるという。
南極海は、海面に比べて深海の水温が温かく、また塩分の濃度が濃い。その深海の温かく濃い塩分の海水が海流によって上昇することで、氷の絨毯を溶かしている。氷が溶けると海水の温度・塩分のバランスが落ち着いてしまい、それ以上の進行が止まってしまうが、その海面に風が吹き込まれることによってスクリューのような形で水の層の入れ替わりが活発になり、穴が凍ることを防いでいる。この循環作用が「エクマンスパイラル」であるという。

とはいえ、この巨大ポリニヤについては、その出現が今後海水、海流、などに対してどのような影響を与えるかについてはまだ不明確となっている。南極が世界の海や気候に多大な影響を及ぼしていることは確かであるが、仮にこうしたポリニヤが続出するのであれば、海流、気候の変動はそれまでの自然科学的法則を変えてしまうほどではないかとも言われているという。

遠く離れた海の話だからといって、度外視していられない問題なのである。

【参考記事・文献】
南極の氷に巨大な穴が出現する謎が解明される
https://karapaia.com/archives/52331575.html
40年ぶりに形成された南極海の巨大ポリニヤ
https://www.eorc.jaxa.jp/GOSAT/news/news_201803_j.html
南極の海の氷に大穴、大きさは北海道に匹敵
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/101800400/
南極という場所の真実 : 地球で最大の重力異常の場を持ち、地球で最も火山が密集する地帯であることがわかった南極。そして最近そこに地球で最も大きな氷の穴が誕生
https://indeep.jp/antarctic-will-do-cahnge-whole-this-earth/

【文 黒蠍けいすけ】

画像 ウィキペディアより引用