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伝説の魔球漫画「侍ジャイアンツ」最終回、あの作品の没案だった?!

侍ジャイアンツは、週刊少年ジャンプに1971年から74年まで連載されていた野球漫画である。

原作は『巨人の星』と同じく梶原一騎であり、「巨人の星」の連載終了半年後に連載が開始された。その「巨人の星」と比べると陽気な雰囲気のストーリーとなっており、かつ常軌を逸した”魔球”と呼ばれる投球の数々を生み出した伝説の作品である。

主人公番場蛮(ばんばばん)が繰り出す魔球こそ、本作を『侍ジャイアンツ』たらしめる最大の武器となっている。ピッチャーマウンドから助走なしにジャンプをし、急角度からの投球を行なう「ハイジャンプ魔球」を魔球第一号とし、以後「大回転魔球」「ハラキリ・シュート」「分身魔球」など数々の魔球を生み出していくこととなる。また、1973年からアニメ化されたことによってアニメオリジナルの魔球というものも大幅に加えられていくこととなっていった。

ただ、元も子もない野暮な話となってしまうが、これらの魔球は現実の野球ルールと照らし合わせるとそのほとんどがボークすなわち反則判定となってしまう。ハイジャンプ魔球を例にとってみても、「マウンドで投球フォームに入ったら最後までプレートから足を放さず投げ終える」というルールを鑑みれば、それが全く実用的でないことがお解りだろう。

また、柳田理科雄の『空想科学読本』にて本作の魔球のいくつかが検証された際には、主人公の超人的な身体能力をそのまま生かして普通に投げた方が強い、という結論までなされたほどである。だが、やはり読者が見たかったものは生み出される魔球とその迫力であったことは間違いない。昭和という時代であったからこそ、成立した夢のある作品であったことは確かだろう。




ところで、「侍ジャイアンツ」はその最終回が原作とアニメで異なっている。アニメの最終回では、ワールドシリーズに苦戦の末、世界最強の打者を魔球「ミラクル・ボール」(アニメオリジナル)で三振に抑え勝利、主人公が祝福を受けて終わるというハッピーエンドであった。因みに、このミラクル・ボールは主人公のそれまでの魔球を全て混ぜ込んだ魔球である。

ところが、原作の最終回はというと、自らの体力を著しく消耗させる分身魔球を駆使した末に三試合三者連続三振の完全試合を達成、それと同時に主人公がなんとマウンドで仁王立ちのまま絶命してしまうのである。この結末は、梶原一騎の作品の中でもきわめてショッキングなものとして話題となったという。

この最終回は、もともとアニメ「巨人の星」における当初の最終回シナリオであったと言われている。没案となったそのシナリオは、星飛雄馬がシーズン最後の試合にて完全試合を達成するが最後の一球を投げた後にマウンドで絶命するというものであり、ほとんどそのまま侍ジャイアンツの原作最終回と重なるのだ。

なお、「侍ジャイアンツ」には、巨人が優勝を逃したら即連載終了という暗黙の掟があったと言われている。急展開で終了した本作は、その最終回が10月14日「長嶋茂雄引退試合」のタイミングに合わせて掲載されたという。

【参考記事・文献】
侍ジャイアンツ
https://dic.pixiv.net/a/%E4%BE%8D%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%84#h2_1
梶原一騎原作の野球マンガ「侍ジャイアンツ」の最終回がやばいwww
http://king-of-manga.com/mangaending-01/
「侍ジャイアンツ」~1971-1974 実は梶原ワールド!破天荒プロ野球・魔球アニメは少年ジャンプが原作だった
https://x.gd/TxdB6

【文 ナオキ・コムロ】

画像『侍ジャイアンツ(新装版)12