「ベルサイユのばら」(略称「ベルばら」)は、週刊マーガレットにて1972年から73年まで連載されていた池田理代子原作の漫画作品である。フランスの絶対王政時代を舞台にした本作は、当時から社会現象ともいえるほどに絶大な人気を誇り、1979年から80年にかけてはテレビアニメ化もされ、1974年に宝塚舞台化に成功して以来現在でも宝塚の代表的な演目となっている。
完全フィクションとなっている作品であり、まだフランス革命の研究が進んでいなかった70年代の連載ということもあって、演出のための脚色や一部史実の無視などが散見される。
しかしその一方で、これさえ読めばフランス革命史はおおよそ理解できると言わしめるほどの忠実さで描かれており、世界史を学ぶとっかかりの教材の一種として持ち出される例も少なくはないという。
80年代にはヨーロッパ各地でもアニメ公開されたが、本国のフランスでの人気はすさまじく、現地のファンたちが「このアニメの視聴を義務化すべき」とまで主張したほどであったと言われている。また、原作者が日本人であるとは思わず、それを知ったフランス人は誰もが信じられないといった驚きを隠せなかったという逸話も残っている。
フランスへの関心を持たせることに貢献した作品と評された「ベルばら」であるが、忘れてはならないのは少女漫画ということである。当然ながら恋愛描写もあるが、日本の少女漫画において史上初めてベッドシーンを描いたのが本作であった。
アンドレとオスカルのベッドシーンは話題となり、やはりというべきかPTAから編集部へクレームが寄せられることとなった。だが、当時の編集長はこれに臆することなく「そのシーンに至るまではじめから全て読んで、それでも不要なシーンであると思ったなら改めて電話を下さい」と言い放ち、その結果2回目の電話がくることは無かったと言われている。
ベッドシーンは多くの読者にとって好評であったと言われているが、その一方で、作中オスカルが死んだ際の反響も多大なものであったという。それまでの倍にもなったファンレターでは、抗議の手紙も多く「生きる望みがなくなりました」と記したものまであったそうだ。
きわめて人気の高かったオスカルにまつわる伝説は他にもある。
『あしたのジョー』の力石徹、『北斗の拳』のラオウなど、作中キャラクターが死亡したことで実際に葬儀が行なわれたという例はいくつかあるが、オスカルも同様であった。だが、ファンイベントほどの葬儀であった力石やラオウとは違い、オスカルの葬儀では本気で泣き崩れる女性ファンで溢れ、挙句にはその影響で現実の恋人や婚約者と別れる女性も続出し、社会問題になりかけた珍事も起きたそうだ。
そのオスカルが死ぬ回の直前、ある本屋にて高校生数人が「オスカルが死にそう」と不安げに話していたところへ、ある人物が「来週死ぬから」と伝えて去って行ったという話がある。
実は、この話しかけてきた人物は作者の池田本人であり、作者であることを名乗らずにイタズラ心で話したのだというのが真相であった。そんな作者も、2009年3月には「多くの日本人が『ベルばら』を通じて仏蘭西の歴史や文化などに関心を持った」ということが評価され、フランス政府よりフランスの最高勲章レジオン・ドヌール勲章が授与されている。
余談だが、オスカルはアニメ『ルパン三世』TV第2シリーズの第101話にゲスト出演をしたこともある。タイトルも『ベルサイユは愛に燃えた』と完全にもじったこの放送回では、ルパンに決闘を申し込んだオスカルが結果的に負け、しかもルパンに服をひん剥かれるという扱いを受けた。
ファンが激怒してもおかしくない描写であるが、このオスカルゲスト出演は実は「ベルばら」本編がアニメ化される前になされている。これだけでも、どれほど当時「ベルばら」が影響力を持っていたかがお判りだろう。
【参考記事・文献】
ベルばら40周年だから明かす裏話「オスカルは34歳」
https://news.livedoor.com/article/detail/6942788/
【ベルサイユのばら】フランス人とヨーロッパ中を大感動させた『日本が誇る最高傑作アニメ』を今こそ見て頂きたい!!
https://x.gd/ufpLcc
オスカル
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AB
【文 黒蠍けいすけ】