エディ・マーフィは、アメリカのコメディアン、俳優、歌手として活躍する人物である。
かつてはハリウッドの代表的なスターと謳われ、1980年代から90年代にかけては日本においても絶大な人気を誇っていた。2020年には、「映画業界の歴史上、最も商業的に成功をおさめたアフリカ系アメリカ人」として生涯功労賞を受賞。
だが、彼の任期は2000年代から低迷しており、現在では表舞台に立つことは滅多になく、主演作も不評が続いていったために、「最もコスパの悪い俳優」第1位に選ばれてしまう。こうした彼の人気低迷は、彼の絶頂期以後に多くの黒人スターが誕生したということの他に、彼自身が抱えていた数々のトラブルも要因となっていたと言われている。
女性問題も多く、中には1997年に性転換した女性の娼婦と親しげにしている様子が見つかり、タブロイド紙に取り上げられた上にその娼婦が自殺をしてしまうという出来事が起こった。また、マーフィは金にがめついという話も知られており、1990年代に公開されていた「ナッティ・プロフェッサー」シリーズでは、特殊メイクによって老若男女すべての登場人物を彼一人で演じたことで人気となっていたが、それによってギャラを独り占めしていたとも言われている。
これらエディ・マーフィの人気が衰えていったことに対して映画監督・プロデューサーであるスパイク・リーは、「あれだけ人気があったのに、黒人の地位向上のための活動を行なわなかった」ことを人気低迷の理由としての見解を示し、たびたび彼を批判している。
女性問題や金銭面など少々ネガティブな面が目立つ彼であるが、次のような驚くべき逸話が語られている。
ある時、ラスベガスのカジノで大金を稼いだ一人の女性がホテルへ戻りエレベーターに乗っていると、背後に一人の黒人男性が立った。大金を持っているので狙われているのではと不安に駆られた彼女に対し、黒人男性は「Four floor」(4階を押して)と行ったのだが、あまりの恐怖から「4つん這いになれ」と言われたと思い込んだ彼女はその場で両手を床につき、直後に驚いた黒人男性を背にして逃げ去った。
翌朝、彼女がチェックアウトしようとフロントへ行くと、なぜか支払いが既に済んでいた。不思議に思った彼女にフロント係が一枚の手紙を手渡すと、そこには「あんなに笑わせてもらったのは君が初めてだよ。支払いは済ませたよ」と書かれていて、そこに書かれていた名前がエディ・マーフィだったという。
この逸話は、2002年から翌年にかけて放送されていたバラエティ番組『所さんの日本ジツワ銀行』の中で、視聴者投稿の形で紹介されたエピソードである。しかし、この「エレベーター・ストーリー」は1970年代で既にアメリカではよく知られていて、エディ・マーフィ以外の人物(マイケル・ジョーダンなどの別の黒人)であるバージョンが多数存在する。
ストーリーの構成は、1970年代にアメリカで放送されていたコメディ番組『ボブ・ニューハート・ショー』での寸劇に由来しているという説もある。
オリジナルストーリーと思われる話は、大柄な黒人男性が犬を連れて応接室に待機しているが、犬が言うことを聞かないため「座れ!」と怒鳴った。すると、それを聞いた人物が思わずそばの机に座ってしまうというものであったという。いわば、テレビ番組のために書かれた脚本が、脚色されて広まっていったエピソードである可能性が高い。
彼にこのような話が本当にあったとすれば、その後の人気の行方は違っていたものになっていただろう。この逸話が、実際の彼とのギャップを込めた人選であったのか、熱烈なファンによる都市伝説化であったのか、真相は今となってはわからない。
【参考記事・文献】
エディ・マーフィが黒人に嫌われている理由を評論家が解説「地位や名誉を黒人の地位向上に利用しなかった」
https://news.nicovideo.jp/watch/nw3093217
エディ・マーフィー
https://x.gd/qHjtz
Hit the Floor!
https://www.snopes.com/fact-check/hit-the-floor/
【文 ナオキ・コムロ】
Photo credit: Castles, Capes & Clones on VisualHunt.com