ハリウッドを代表する俳優そして映画監督でもあるクリント・イーストウッドは、1930年生まれで90歳を超える老齢ながらも現役で活躍する人物である。
ハリウッドの至宝とも呼ばれる彼は、30代までほとんど芽が出ることが無かったものの着実にキャリアを積み続け、1972年の『ダーティハリー』によってアクションスターの地位を獲得した。荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』の空条承太郎、鳥山明『Dr.スランプ』に登場する空豆クリキントンのモデルともなっている。
「ダーティハリー」以前から映画制作のノウハウを生み監督作品も生み出していた彼は、本作以後「主演・監督作」を次々に発表、1992年の『許されざる者』ではアカデミー監督賞・作品賞とゴールデングローブ賞を受賞、2004年の『ミリオンダラー・ベイビー』でも2度目となるアカデミー作品賞・監督賞を受賞し、映画監督としての評価も確固たるものとなっている。
そんな彼の監督としての最大の特徴は、「早撮り」であると言われる。
1968年に設立した自身の映画制作会社マルパソ・カンパニー(現在はマルパソ・プロダクション)は、気心の知れたスタッフと長年に渡って組むことで家族的な制作体制を築き、これが撮影の効率化を可能とさせた。
その撮影スピードは凄まじく、ハリウッドの大手が3年以上かかる制作を1年ほどで作れてしまう上、撮影スケジュールが遅れるどころか予定日よりも早く撮り終えることが常であるというのである。だが、早撮りを可能にした要因は体制だけではない。
クリントによれば、「役者がいくら頑張って演じたところで大した差はない」という理由のもと、セリフをトチらない限りはワンテイクで済ませてしまうという。出演予定であった赤ん坊が急病となってしまった際には、人形で撮影を続行させたこともあったという。
また近年においては、照明を用いずに自然光だけで撮影を行なったり、さらには「当事者に取材するより本人に出演させた方が”手っ取り早い”」という理由から本人を出演させることも多くなっているという。テロ事件で重傷を負ったことのある人物を本人として役柄に就かせ、実際にそのシーンを演じさせたという逸話まである。
「余計なショットは取らない」「足りないものは現場にあるもので何とかする」、この一見すると無茶苦茶なようにも見える制作スタイルであるが、クリントの半世紀以上のキャリアに立脚したそのクオリティは充分な仕上がりとなっており、ヒットと制作費回収といった好循環を生み出すことに成功しているという。
かつて、史上最低の映画監督と称されたエド・ウッドも早撮りであったが、その熟練度は雲泥の差があると言わざるを得ないだろう。
2014年の『アメリカン・スナイパー』では、監督作品としては史上最大のヒット作となり、アメリカで公開された戦争映画史上最高の興行収入額を記録した。
彼の記録は、まだまだ更新し伝説を作り続けるのかもしれない。
【参考記事・文献】
イーストウッド監督を知るための7つのキーワードとは?
https://screenonline.jp/_ct/17148990
クリント・イーストウッド
https://x.gd/NmAW1
なぜ、本人を起用したのか? クリント・イーストウッド監督が新作映画の核心を語る特別映像解禁
https://screenonline.jp/_ct/17142399
【文 黒蠍けいすけ】
画像 ウィキペディアより引用