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「北京原人」の失われた頭蓋骨の化石の謎

1997年12月に公開された日本映画『北京原人 Who are you?』は、北京原人の頭蓋骨の化石から採取されたDNAによって北京原人を現代に復活させ、それを発端として巻き起こる騒動を描いた作品として知られている。

つじつまの合わないストーリー構成など、あまりに突っ込みどころの多い内容から迷作・珍作として名高いが、それゆえに反響は大きなものがあり、同時期に放送されていた特撮ドラマ『ビーロボカブタック』にて、「北京原人パニック!!」(12月21日)という回が放送されたこともあった。

北京原人の化石は、1929年に中国の北京市房山区周口店にて、古人類学者の裴文中(はいぶんちゅう)によって発見された。作業員から「小さな洞穴を見つけた」という報告を受けた彼は、自ら縄を降ろして確認に向かい、洞穴の中をわずかな明かりで探索し、そこで地面に半分埋まった状態の頭蓋骨を発見。

北京原人と称されたその化石は世界的に注目されることとなり、その後も多くの骨や歯が発見されたことから詳細な研究がすすめられた。その結果、約77万年前から23万年前まで暮らしており、脳容量から現生人類とチンパンジーの間の存在ではないかと考えられた。

しかし、発見された頭蓋骨の化石は、その後行方不明となってしまった。




1941年、日中戦争の激化を受けて化石を中国から持ち出し、アメリカ国内で一時保管することとなった。化石は、河北省の秦皇島(しんこうとう)の港へと運ばれ、そこから貨客船プレジデント・ハリソン号に乗せられてアメリカへ向かう計画であった。だが、プレジデント・ハリソン号は上海付近の海域で日本軍によって拿捕され、化石の護送任務にあたっていた海兵隊も日本軍の捕虜となってしまった。その混乱の過程の中で、北京原人の化石は紛失し、現在も行方不明のままとなっている。

1966年には、同じ発掘現場からわずかな骨や歯の化石が発掘されたが、80年代にはすでに発掘を終えている。現在、周口店遺跡博物館に展示されている頭蓋骨の化石は詳細な資料を基に作られたレプリカである。

紛失理由には、戦争の被害に巻き込まれて破壊された、日本兵によって捨てられた、米軍により撃沈された日本の貨客船に積まれていた、北京あるいは秦皇島のどこかに今も隠されている、漢方として粉々に砕かれた、などさまざまな説が唱えられている。

興味深いのは、化石が紛失されたという話が浮上してきたのは、42年の夏、英字紙に「原人化石が紛失」「偽物にすり替えられている」といった報道が出始めたことによる。その確認のための調査によって、確かに化石が無くなっていたことが判明したという。

そもそも、この化石紛失の噂がどこから立ち始めたのかもハッキリと判ってはいない。一説には、話の出所は日本政府や軍部の威信を揺るがすために脱走した捕虜が広めたのではないかとも言われているが、そうであるならば彼らは紛失したことをすでに知っていたということになるのだろうか。北京原人の化石は、混乱の中で紛失してしまったのではなく、意図的に紛失あるいは隠されたということなのだろうか。

真相は今もわからないままである。

【参考記事・文献】
北京原人の時代、定説より20万年早く
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/1008/
北京原人発見から90年 「消えた頭蓋骨」は今も不明
https://www.sankei.com/article/20191212-CU4XBXL5DVMV5IDH54GZIK34LU/
北京原人の化石紛失をめぐる捕虜の動き
http://powresearch.jp/jp/activities/workshop/genjin.html

(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 José-Manuel Benito Álvarez (España) —> Locutus Borg – 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1899212による