味の素は、食品企業・味の素株式会社が製造販売する「うま味調味料」である。1908年に化学者である池田菊苗(きくなえ)が発見したうま味成分「グルタミン酸ナトリウム」をもとにして製造され、奥様の味方として重宝されている調味料である。その一方で、これまで数多くの都市伝説の標的としても取り上げられているのを耳にした人も少なくは無いだろう。
味の素にまつわる都市伝説は、きわめてネガティブなものがつきまとっており、「社員は味の素製品を口にしない」というような話も囁かれている。また、「販売量を増やすために瓶の穴を大きくした」という話も近年では出回っているが、公式が明確にこれを否定している。
1960年代には、海外において大量の化学調味料を使用した中華料理を食べた時に、喘息の発作が起きやすいという報告が相次いだことで、中華料理店症候群(チャイニーズ・レストラン・シンドローム)といった症例が広まったこともネガティブな印象を与える一因となったのだろう。
さらに69年、味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウムをマウスに皮下注射したことでマウスの脳に損傷が発生したというアメリカの科学誌『サイエンス』の報告が拍車をかけた。もっとも、サイエンスで記載された実験は、味の素およそ3本分の皮下注射というものであり、それで体を壊さない方がおかしいと言えるレベルのものであった。
原材料についても噂は絶えない。遡って明治の1910年代には、既に「原料が蛇である」というような噂が出回っていたという。これは当時発行されていた月刊雑誌『滑稽新聞』の記載に由来しており、売り上げに相当響いたという。
これ以降、原材料に関しては「髪の毛が使用されている」「石油を使っている」といったものが囁かれていたがこのうち、石油については、1970年代に石油由来の「アクリロニトリル」という原料を用いていたという事実を公式も認めているが、人体には無害であったとされている。
なお、毛髪からアミノ酸を抽出し、原料として調味料製造することは実際に可能である。日本でも昭和初期に、「人毛醤油」の研究がなされていたが実用化には至らなかった。ただ、中国では密かに低級の調味料として流通していたようで、2004年に中国で「人毛醤油」の製造禁止令が出されている。
しかしながら、味の素の都市伝説で囁かれるような、海外から大量の毛髪を輸入して製造しているという事実は確認されておらず、この人毛醤油の話が混同された結果に生まれたものであると考えられる。
日本人は、たいていのことについては寛容であるが、食が関わる事柄についてはきわめて過敏になる、といったことがよく聞かれる。
食にまつわる良からぬ都市伝説は、味の素以外のものでもたびたび耳にするが、味の素の都市伝説は、薬屋の売り口上として面白おかしく語られた「原料が蛇」ということを皮切りに、何より“化学”調味料という言葉に抱く得体の知れなさが付随したことなど、様々な事象が運悪く重なったことによって築かれてきた、まさに“伝説”だと言えるだろう。
【参考記事・文献】
うま味調味料『味の素』の危険性と誤解
https://drkojou.com/health/post-5081/
恐ろしい味の素の原料
https://fanblogs.jp/topclass/archive/143/0
味の素にまつわる様々な都市伝説
http://taboomatome.seesaa.net/article/440379283.html
味の素の原料(都市伝説)
https://ameblo.jp/mtada99/entry-12474289829.html
(ZENMAI 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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