2021年にアニメ化50周年を迎えた『ルパン三世』。漫画家モンキー・パンチが生んだこの作品は、そのキャラクターと共に多くの人々に愛されてきた。
2015年には、およそ30年ぶりにアニメシリーズが製作され、現在までPART6が放送される長寿作品となっている。最近では、公開当時のトラブルにより声優陣が全て交替していることで知られる問題作・劇場版『風魔一族の陰謀』が地上波で放送されて話題となった。
『ルパン三世』も、多分に漏れず都市伝説が語られている。しかし、『ルパン三世』にまつわる都市伝説において顕著なのは、「作者・制作側の事情」に基づくものが非常に多いという点である。
「峰不二子の父はルパン三世に殺されている」「ルパン三世はアルセーヌ・ルパンの孫ではない」「ルパン三世と峰不二子の子どもがいる」など様々語られるものは多いが、それらは原作コミックで描写がなされたり、作者やスタッフにより実際に説明がなされたりしたことのあるものとなっている。
ルパンは基本的に一話完結の構成となっており、その都度細かい設定などについてズレが生じているというのは致し方ないことではあるのだ。こうしたルパンの都市伝説として語られるものの多くは、都市伝説というよりも豆知識という具合のもので占められていると言っても良いだろう。
近年になりよく取り上げられるようになったのは、「ルパン三世は存在しない」というものである。これは、フィクションのキャラクターが実在するわけがないという意味ではなく、作中のルパン三世という存在はそもそも虚構であるというものだ。これは、1985年に公開予定となるはずだった押井守版ルパンのシナリオに端を発する。
宮崎駿監督『カリオストロの城』に続く劇場版第3弾となるはずだった押井守版ルパンは、ルパン三世のメインキャラクターである次元大介、石川五右衛門、峰不二子たちがそれぞれルパン三世に変装しながら展開されるというものであり、ルパン三世本人という存在が作中に登場しない内容であったという。このシナリオは強固に反対され、企画が頓挫することとなり幻となった。なお、押井はその後も再度監督として声がかかるも拒否しているが、アニメシリーズPART6にてゲスト脚本を手掛けた。
また、「今までのルパン三世は偽物である」というものもあり、これは宮崎駿が担当したアニメシリーズPART2にまつわるものである。このシリーズの最終回を担当した宮崎は、PART1時代の緑ジャケットを着たルパン三世を登場させ、今までの赤ジャケットルパンは全て偽物だったという演出を図ろうとしたのだ。
この内容についても大きな反発が起こったが、納品者が拝み倒して事なきを得たという。因みに、テレビスペシャル版『ルパン三世』などで毎回ヒロインが登場するようになったのは『カリオストロの城』の影響だと言われている。また、原作では殺人も厭わないような冷酷たるルパン像が、女・子供には優しいという義賊のイメージに変容したのも同様であるという。
作者モンキー・パンチはそれが気に入らず、自身が監督を務めた劇場版ルパン三世『DEAD OR ALIVE』でルパン三世がヒロインを助けるシーンに異論を唱えたそうだ。
『ルパン三世』は、シナリオを手掛けるような立場の者からは、実験的な表現を試みたいという意欲を湧かせる特別なオーラを持った作品であったようにも思える。それは、「ルパンの顔は素顔ではない」という都市伝説(実際にある設定ではあるが)のように、どこか謎めいて隠された部分を持ったルパン三世ならではの魅力による賜物であるとも言えるだろう。
【参考記事・文献】
・ルパン三世:脚本に押井守起用の裏側 「初めて見るルパン」「やったことがない表現」
https://mantan-web.jp/article/20211006dog00m200047000c.html
・あまり知られていないルパン三世の裏設定・都市伝説集
https://renote.net/articles/27820
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(ZENMAI 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)