スピリチュアル

「小学校で出会った不思議な少年」

讃岐の白狐です。今回も記憶に甦った不思議な出来事を投稿させていただきます。

私は25歳の頃から15年間ほど 香川県のプロの劇団と共に全国の小学校や中学校を巡って 当時児童演劇界ではタブーとされた
原爆を扱った演劇公演を担当していました。

時には文化庁の依頼で何の娯楽施設も無い山間部にある過疎地の小学校を巡ったりして、個人的には刺激的な心があらわれるような旅巡業の日々を過ごしていました。

アトラスラジオのリスナーの方の中にもしかすると御覧になった方もいらっしゃるかもしれません。公演名は「ぴっちゃか ぽっちゃか物語」と「オトトとチコの海」の2作品がメインでした。

体育館の狭い舞台にセットを組み、舞台から3m程離れた両サイドに巨大な脚立を立て、その脚立の上部に加工した鉄骨に照明器材を設置し、その脚立の内部で私はオペレートを行っていました。

体験した小学校が何処の小学校だったのか地名はどうしても思い出せませんが、その日も登校してくる小学生と共にトラックを校庭に乗り入れ、興奮した子供達に囲まれながら 体育館に器材関係を搬入し、給食後の午後の公演に向けて設営と簡単なリハーサルを終えました。

校内放送で演劇公演の案内があった後、クラスごとに整列して先生の先導で体育館内に全校生が入場してきて、私の指導のもと体育館のフロアに座って頂きました。

全生徒を座らせたのち 私は生徒の最背後に立っている先生に様々な進行の段取りを説明していましたが、その時、私はある事に気が付きました。

入場完了後、私は全ての扉を閉め、暗幕のカーテンをすべて閉めていたのですが、体育館正面の扉の暗幕が少し風に揺れていて、扉が薄く開いた隙間から子供の覗く顔が見えました。

「先生。入っていない生徒さんが、まだいるようです」

私が指差して先生の視線を向けると「えっ?」と一度振り返って見ましたが・・・「大丈夫です。かまわず始めて下さい」と言って舞台に視線を戻しました。

「いえ、全ての生徒さんに見て頂きたいので中に連れて来て下さい」と頼むと「だから、あいつの事はほっといて下さい」と切れ気味に言われてしまいました。

その態度に腹が立った私は、その扉まで走って行って開き、運動場に面したその入り口で少年を見下ろしました。白い半そでのシャツはボタンが所々外れていて、黒い半ズボンから片方がダランとはみ出していて何だかみすぼらしい子供に見えました。




「みんなと一緒にお芝居を見よう」と私がうながすと首を横に振ったので「みんなが仲良くしてくれないの?だから一緒に座るのが怖いの?」と言うとうつむいたので「おじさんたちは君のような子供達に見せる為に来たんだ。だから見て欲しい。恐いならおじさんが横にいて一緒に見せてあげるから」。

そういうと、嬉しそうに私を見上げて来たので、私は、彼の手を引いて体育館の中に入り、驚いた表情で私を見ている生徒達を尻目に脚立の中のオペレートブースの私の横に彼を座らせて、上演を開始させました。

無事に観劇会を終了した後、彼は嬉しそうに私の身体を何度も叩いた後、入って来た扉から走って運動場に出て行きました。

私達は生徒達が退場した後、撤去作業に取り掛かりましたが、メイクを落とした役者たちが撤去作業に加わった時役者たちが皆、舞台から私の姿が見えなかったのは何故かと聞いてきました。

それで私は入場時にあった出来事と開演中は私の位置に子供に座らせていた事、私が見えなかったのは、子供を真ん中に座らせていて 私が端に寄っていたからだと説明しました。

しかし、彼等が返して来た言葉は、「いや、空のパイプ椅子しか見えなかった」でした。

そんな筈は無く、スポットが当たっている舞台上から見たのだから見間違いだと主張しましたが、いつもは私の顔が良く見えていると言われ 何だか変な気分になりましたが、それ以上は触れずに作業を終えました。

体育館の正面に3tトラックを着けて器材関係を積み込み始めた時、下校中の子供たちが集まってきました。様々な劇に対する感想を矢継ぎ早に捲し立てる子供達の対応をする役者たちは、子供達に怪我が無いようにトラックから少し離れて対応していましたが、私は、その群れから少し離れた場所で男子生徒4、5人に囲まれて立っているあの少年を見付けました。

その少年は、まわりの同級生を蹴ったり突き飛ばしたりしていました。

私は、自分がしてしまった過ちに気がつきました。私が彼を特別に扱った所為で クラスの力関係が逆転してしまったのだと感じました。

私は彼のもとに駆け寄り、友達にそんな事をしてはいけないと一生懸命にさとしました。

しかし、彼は不気味な笑顔を私に向けると 思いっ切り私の腹部に拳を打ち込みそれを見た同級生が歓声を上げました。

これ自体が逆効果だったと気づいた私は、やりきれない気持ちのまま作業を終えて学校を後にしました。

車中で「あの子ですよ。オペレートブースに座らせた子供は」と劇団員たちに話した時、誰もそんな子供はいなかったと言われ、腹部を打たれてうずくまった時も 一人で急にうずくまったように見えたと言われ、私はかなり混乱しました。

先生にも見えてたし、彼を連れて行く時も会場の子供達には見えていたようだし、彼に暴力をふるわれていた同級生にも見えていたはず。

どう思い返しても幽霊だとは思えない。でも、彼が見えない劇団員はどうしてか?

全く理解出来ない体験でした。

(アトラスラジオ・リスナー投稿 讃岐の白狐さんミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 砺山 / photoAC