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隠れキリシタンの秘密教団?!「クロ宗」の謎

クロ宗あるいはクロ教は、鹿児島県の下甑(しもこしき)島のごく一部、ある集落で今も続く土着の信仰と言われており、キリスト教が禁教・弾圧された時代の隠れキリシタンにルーツを持つとされている独自の信仰である。

クロ宗の成立については、大きく三説がある。

一つ目は、1638年に起こった島原・天草一揆での残党の一部が甑島へ移住したことで始まったとされる説。二つ目は、マニラから渡り甑島で最初の宣教活動を行なったという「ドミニコ会」による布教によって、洗礼を受けた信者たちが結集したものであるという説。

そして三つ目は、日本で最初のクリスチャンと呼ばれ、ザビエルの通訳・案内役を務めたヤジロウ(アンジロウ)を教祖とする説である。『甑島伝説集』『薩藩旧伝集』によると、伝道のさなか仏教僧侶の排斥によってザビエルと分かれたヤジロウが、逃れた末に甑島の長浜に漂着してその後片野浦に移った。その地で組織したキリスト教に属する密教がクロ宗であるとされ、片野浦にはヤジロウの墓と言われる天上墓が史跡として残っている。




クロ宗は、現地調査を行なっても地元民が口を閉ざし、その実態の多くが不明であるという。一説には、クロ宗を信仰する集落では3メートルもの壁の中で悪魔崇拝が行なわれており、生き血や人肉を食するカニバリズムも行なわれていると言われている。

しかし、クロ宗のこうした信仰内容については創作ではないかとの疑問もある。特に、堀田善衛の小説『鬼無鬼島(きぶきじま)』(1957)の中で描かれているクロ宗の秘術や掟といったものが基になっているとも考えられている。またカニバリズムについても、禁教時代に多く見られた西洋食のステーキやワインを人肉や血と誤解した妄言と同様であるとの指摘もある。

資料が殆ど残っていないクロ宗は、その実態がベールに包まれている所以もあり、弾圧の根拠として流布された妄言や小説に基づく思い込みや誤解といった問題が常につきまとっている。クロ宗への偏見も古くからあったとされ、クロとはクロス(十字架)ではなく”白”(正統)に対しての”黒”(異端)という偏見を含んだ外部からの名称であるとも言われている。学術的な追究はもちろんであるが、その実態が偏見なく明らかになることを切に望みたい。

【参考記事・文献】
・梅北道夫『ザビエルを連れてきた男』
・日本の怪村研究会『マンガ実録!日本の怪村』
・隠れキリシタンと隠れ念仏
https://rapt-neo.com/wp-content/uploads/2015/06/article.pdf

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(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 shikema / photoAC