先日あるライブ配信を観る機会があった。
枠主の女性ライバーの後ろに面白いネオンサインの室内ディスプレイが輝いていたので、コメントで褒めたところ、彼女はにっこりと笑って・・・
「これカワイイでしょ? 本物のネオンサインなんだよ」
と、こたえてくれた。
私は、その“本当のネオンサイン”という言葉の意味がわからず、しばらく考えてしまった。しばらくして、『あぁそうか!今はこういうもの(電灯)はほとんどがLEDに置きかわってしまったのだ』と気がついた。
調べてみたところ、ネオンサインの基となるネオン管は、専門の職人が、様々な形に曲げたガラス管の中に、ネオンをはじめとした、希ガスをつめて作る手仕事製品なのだが、全盛期には数千人いた職人も現在では全国で300人程度しか残っていないという。
夜の街を彩ってきたネオンサインが、日本に渡来したのは1925年から26年(※大正14年から15年)だというから、ほぼ百年の歴史があるわけだ。
関東大震災後の復興ブームにのって、物珍しさからビルの装飾として用いられたネオンサインだったが、ここで風俗史上に残る大きな出来事がおこり、風俗の世界へと入っていく・・・
それが大阪からの性風俗店の進出である。
「カフェー」というと、今の方は喫茶店系のそれを思いおこされるであろう。
事実、東京のカフェーは、ウエイトレスである女給がいるだけのおとなしいものであった。だが、大阪からやって来た、その名も『タイガー』というカフェーはまるで違うものであった。
まず女給たちに派手なメイクをさせて、そのうえで客のとなりに座り、体を密着させてワイセツなサービスを提供したのである。(面白いことに、こういったエゲツナイ性風俗というものは、後年の特出しストリップといい、ノーパン喫茶といい、みんな大阪からやってくるのはなぜなのだろう? )
最初のうちは眉をひそめていた東京の客たちであったが、すぐに大阪式カフェーは大繁盛するようになった。
大阪式カフェーは調子に乗り、ついにシャワー付き個室のある店や、女給を連れ出してお楽しみがデキる、もうカフェーだか何だかわからない店まで現れてしまったが、こういったことは当然お上の怒りを買い、強い規制の網が掛けられた。
この時出来た規制によって、酒類を置かずに女給のエロサービスもない健全な店が【純喫茶】とされ、酒あり女給のエロサービスありの店が【風俗喫茶】とされた。
現在に残る【純喫茶】の名は、この時にできた行政上のものである。
さて、規制を受けた大阪カフェーはというと、廃れるどころかますます増々増殖して、『日輪』や『赤玉』などという超大型店が出現した。
どれくらい大型かというと、五階建てのビル一つを丸々買い取り、そこに人目を驚かすようなネオンサインの飾りつけを行ったのである。
とはいえ、各地の都市に本格的にネオンがまたたくのには、戦後の1950年代以降の高度経済成長期に入ってからである。
ある年齢以上で東京近郊にお住まいだった方であれば、昭和時代の赤羽や立川の駅前に、巨大なピンサロのネオン看板が、輝いていたことを覚えているのではなかろうか。
今はあまり使われなくなったが、【紅灯】という漢語がある。飲食店に掲げられた赤いチョウチンの意味で、そのまま繁華街を意味したりもする。
赤色は、人類の食欲を刺激し、男性の性欲も奮い立たす。
私は「赤い灯 青い灯 道頓堀の~ 」(※『道頓堀行進曲』)と流行歌に唄われた通りに、歌舞伎町を以てしても、大阪風俗街のネオンが一番派手なのだろうと思っていた。
しかし、知り合いの風俗ライターの話によれば、一番ネオンが派手な風俗街は、大阪でも東京でもなく、なんと名古屋だそうである。
特徴としては、他の地域に見られないほど紫色を多用しているのだという。ただしその理由は不明である。
さて冒頭に述べたように、このところすっかり廃れ気味だったネオンサインを、再び静かに支持する若者たちが増えつつあるという。
あのかすかに揺らぐ光と、ジジジという虫の羽音のような雑音が、エモいのだそうである。ネットからのデジタル音声の全盛期にも、LPレコードの売り上げが伸びているようなものだろうか。
人間は全くもって合理的な存在ではなく、非合理でエモーショナルなものに心動かされるのだ。
TENGAではこの秋【灯狂光愛 〜TOUKYOU NEON LOVE〜】と銘打ち、ネオンアートの展示イベントを開催する。
展示と合わせてネオン色をお好みの色に選択できる「カスタムTENGAネオン」の受注注文制作やオリジナルアパレルの販売も実施。ご興味のある方はぜひ、秋の夜長を彩ってくれる【本物のネオンサイン】をその目で楽しんでみていただきたい。
『灯狂光愛 〜TOUKYOU NEON LOVE〜』特設サイト:https://www.tenga.co.jp/campaign/tenga-neon/
■TENGA STORE YOKOHAMA(https://twitter.com/TENGASTOREYKHM)
・開催期間:2023年9月16日(土)~10月1日(日)
・所在地:〒220-8577 神奈川県横浜市西区南幸2丁目15-13 横浜ビブレ2階
・営業時間:11:00〜21:00(土日祝は10:00オープン)
■TENGA STORE TOKYO(https://twitter.com/tengastoretokyo)
・開催期間:2023年10月4日(水)~10月22日(日)
・所在地:〒100-8488 東京都千代田区有楽町2丁目5-1阪急メンズ東京 6階
・営業時間:12:00〜20:00(土日祝は11:00オープン)
(及川 靖 山口敏太郎タートルカンパニー)