短い怪談を一つ。
17歳の時に東京から夜行列車で青森に入り、青森から岩手県遠野まで三陸海岸沿いを徒歩で、野宿をしながら旅をしました。
岩手県のある観光地まで来た時に激しい雷雨にみまわれました。夜も近かったので浜辺に面した小さな公園の東屋のベンチにブルーシートを張って簡易テントとし、その中に潜り込みました。
夜になっても雨は降り続いていました。真夜中過ぎだったでしょうか、困ったコトに激しい尿意に襲われました。
何とか我慢しようとしましたが耐えきれずに、ブルーシートから這い出して、公園の端の公衆トイレに駆け込みました。トイレの中は真っ暗闇、懐中電灯の明かりでなんとか用を足して外に出たのですが、目の前の浜辺に違和感を覚えたのです。
雨は激しく降り続いています。その雨の中、波打ち際に焚き火が見えました。炎の影になって人影も見えます。1人?2人?その影は蜃気楼の様にゆらゆらしていて人数が把握できないのです。
しかし、根本的におかしいのは、この雨の中で、しかも波打ち際に焚き火が燃えているコトです。
間違いなく良くないモノだと思いました。
僕は懐中電灯を消して後ずさるようにして東屋に戻りブルーシートに再び潜り込み、うつらうつらと熟睡出来ぬまま朝を迎えました。
朝には雨も止み、青空が広がりました。簡易テントを撤収してから携帯コンロで湯を沸かしてスープとパンで朝食をしました。目の前に広がる砂浜には、昨夜の焚き火を思わせる痕跡は、何も残ってはいませんでした。
しかし、それから東京に戻るまで、様々な怪異に見舞われます。そのお話しはまたの機会に。
(アトラスラジオ・リスナー投稿 福島のゴンベッサさん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
Kevin PhillipsによるPixabayからの画像