ゲリー板橋でございます。
先日、旧友の丈~じょう~と久々に会いまして積もる話をしておりましたところ、彼の弟のカツマサ君の話題になりました。
カツマサ君は料理人でありまして、イタリア料理から出発し某有名ホテルや、某有名店で腕を上げ、今は大阪北部で自分の店を構えております。
彼が今から10年以上前は、大手不動産会社と契約を結び、その会社が持っていた店舗でダイニングバーを経営していました。住宅地にあるにも関わらず、万博記念公園につながる幹線道路きわにある立地条件にも恵まれ、結構、繁盛しておりました。
私も、じょうとよく行ったもので、その頃の思い出話をしていましたら、じょうが、ふと古老が思い出したかのように、「そういえば、ゲリーには話してへんかったけどな、こんな事があったんや」とこんな話をしてくれました。
土曜日の深夜、といっても既に日付は変わり日曜日の未明になっていましたが、じょうは車で帰路についていました。幹線道路をそのまま走ると、カツマサ君のお店の横に出るわけですが、彼は、『いくら何でもカツマサも店を閉めて帰ってるやろな』と車を走らせていました。
カツマサ君は、お店を閉まってからも、仕込や、料理の研究をしていて幹線道路沿いからも、厨房の一部が見る事が出来るので、常連さん達や、帰路に着く彼からもその姿がよく見られたそうであります。またカツマサ君はサーフィンをやっていまして、日曜日は早朝から波に乗りに行くのが常であり、土曜日は何時も早めにお店を閉めていたのです。
カツマサ君のお店が見えてきました。厨房にぼんやりと常夜灯が灯り、人影が見えました。
『あれ、あいつ、まだおるんかいな』
お店に近づき厨房の窓を見ますと、その人はカツマサ君ではなく女性でした。彼女は横顔で表情は判りませんが、白いコックコートに身をつつみ、熱心に下を向き仕込か調理をしている、そんな姿だったそうであります
『あいつ、人、いれたんか?』
『誰や?』
車の速度を落として沿道に停めようとしましたが、後ろから数台の車が続き、そのまま車を走らせたそうであります。
数日たち、じょうはカツマサ君に電話をいれました。
「誰か新人さん入れたんか?」
カツマサ君は「いいや、誰も入れてへんで」
「土曜日の夜に、女の人、厨房にはいとったやろ?」
「土曜日は、早めに閉めるん、お兄ちゃんも知っとるやろ」「店には誰もおらんし、そもそも、人雇う、お金ないで」と笑っていたそうであります。
でもカツマサ君はこんな事を言いました。
「でもな、お兄ちゃん、たまに常連さんから言われんねん。『昨日、遅くまで店におったんやね?』。僕、その日は店には残ってないのにやで。『女性の新人さん入ったん?でもお店に来てへんね』。てね」
じょうは、いわゆる、見える人でもありますが、カツマサ君も彼以上に見える人です。
じょうは、「お前の店、なんかあるんとちゃうのんか?」
「いいや、なんもないで。なんも起こらんし、なんもみえへんわ」と、笑っていたそうであります。
カツマサ君の前にもその不動産会社と契約をしていた人がいたそうでありますが、悪い話はなく事故の話もなかったそうであります。
カツマサ君がその不動産会社との契約が終わるまで、じょうがその女性、未明の料理人の姿を見る事はなかったという事ですし、カツマサ君が、お店で奇妙な事に遭遇したり、その女性の姿を見る事はありませんでしたが、やはり時々、「新しい人、入ったの?」の質問は、お客さんからあったそうであります。
果たして、その女性が何者であるのかは今となっては知るすべもございません。じょうは「残留思念の類いではないのか」と言いました。彼も見える人、感じる人ですが、その店舗からは悪い気配はない、と言っていました。
じょうは、「俺もよくは、わからんが、以前から代々、その店に関わった人々の残像や、想いなんとちゃうのんかな」、そう言いました。
なる程、かつて、その物件で、お店を開いていた人の思念。または、建物の記憶。私の別の友人は、建物や、土地にも人間同様に記憶があり、それが我々に影響を及ぼす、と言いましたが、本当でしょうか?
アトラスラヂオでも残留思念の話はありましたね。敏太郎先生はどのように考察されるでしょうか?
それでも解せないのが、見える人のカツマサ君が一切、その店で何も感じず、怪しい気配も感じず、見えず、その未明の料理人の女性を、じょうや、一部の常連さん達が見た、という事でありますし、なぜ、今になって、じょうが私にこの話をしたのかであります。
その店舗が同様になっているのかは判りませんが、カツマサ君のお店はコロナ禍のときでさえも、熱心な顧客がつき、なんとかやっていました。その店舗も同じように、未明の料理人が今夜も熱心に研究をした、料理を、未明の姿のない常連客のテーブルに届けているのかも知れません。
(アトラスラジオ・リスナー投稿 ゲリー板橋さん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)