スピリチュアル

「マネキンの視線」

ようやく右足の骨折も松葉杖から解放されたものの右眼、右ひじの損傷右肩に原因不明なミミズばれ多数、何故か右側にばかり障害が連発中の讃岐の白狐です。

今回投稿させていただきますのはマネキン人形との奇妙な思い出です。

まず最初の記憶は、以前投稿しました沼地に建てられた小学校での小学四年生の時の思い出です。

私の教室は校舎の2階で、席は廊下に面した窓際でした。廊下の片側が教室で、廊下の窓の下には外壁までの細長いコンクリートの通路がありました。

外壁にそってコトデンの線路が走り、教室の窓を開放していると私の席からは線路沿いの家並みの2階以上が見渡せました。

暑い夏の日の授業中、私は開け放たれた窓の外から突然強い視線のような違和感を感じました。私は、その違和感の原因を探したのですが廊下には誰もいなくて、線路沿いの民家の屋根に鳥や猫がいるわけでも無く、何度覗いてもその気配の原因となる物を何も見付けられませんでした。

先生からは注意され、結局、気持ちが悪いので出来るだけ窓の外を見ないようにしていましたが、下校前の掃除の時間、廊下の窓を拭いている時にその気配の原因らしきものを見付けました。

それは、線路の向う側、一軒の大きな町工場の2階の窓からだと気づきました。

そこはマネキン工場で以前から時々 沢山のマネキンの上半身が並んでいるのは見た事は有りましたが、その日は窓の中の様々な方向を向いて置かれたマネキンの間から一体の女性のマネキンの顏がこちらを向いていて、何故か私と目が合っているような感覚を強く感じました。

なんだ、マネキンだったのか。

でも、オカルト脳を持たない当時の単純な私は、相手がマネキンだった事で単なる気のせいだと妙に納得しながらそのマネキンを見詰めていました。

ところが、その時同級生が私とマネキンを遮るように 突然、眼の前の窓のサッシにひょいと腰掛けて「なんだよ変態、裸のマネキンに興奮してんのか?おまえ・・・」笑いながら窓枠に手を掛けて彼が背後のマネキンの方を振り返った時、わっ!と声を上げて彼は背中から窓の外に落ちて行きました。

突然の事に動けない私のまわりからは悲鳴が聞こえ、教室から先生が飛び出して来て救急車が呼ばれて学校中が大騒ぎになりました。

先生は私が彼を突き飛ばしたのではないかと疑い、私は両親まで学校に呼び出されて長い間真偽を問われました。

結局、彼は頭から落ちたにもかかわらず なんとか命を取り留め、彼の証言によって私の嫌疑は1週間程たってからようやく晴れました。

しかし、2か月後登校してきた彼から直接聞いたのはあの時、外から背中を思いっ切り引っ張られて落ちたという言葉でした。周りの生徒たちは、頭を強く打ったせいでおかしくなっているのだと誰も彼の言葉を信じませんでしたが、私には、何だか彼の言葉からおそろしい想像しか出来ず、マネキンの仕業だったのか、マネキン倉庫に潜んだ別の何かの力だったのか・・・。

それからの私は、その窓の外からの視線を感じてもそのマネキン工場の窓が見れなくなり、そればかりかデパートでもマネキンを直視出来なくなりました。



その10年後、場所は変わって福岡市中央区に以前有った、今は無き福岡市立少年科学文化会館での出来事をお話させていただきます。

当時私は19歳でした。そこは、イベントホールの他にプラネタリウムや展示会場などがありました。その日、私は演劇公演のスタッフとしてイベントホールで仕事をしていましたが、設営を終えて、特に仕事が無かった私は客席の最前列で何人かの仲間とぼんやりとリハーサルを見ていました。

舞台上を見ている内に 誰かの強い視線を目前に感じて、何気なく私は視線を下ろしました。

不思議な事に舞台面と客席床との間の格子状になった框(かまち)の奥からそれは強く感じ、なんだろうと、格子の間の闇の奥を注視していると、やがてそこに女性の顔面が浮かんできました。

格子越しに大きな眼球を真っ直ぐに私に向けて来るその顔に表情は無く、それが不気味で私は座席に深く座ったまま凍り付いて動けなくなりました。

すると隣に座っていた2年先輩の方が「どうした。大丈夫か?もしかして、お前見えてるのか?」と不可解な問い掛けをしてきました。

私がその視線に縛られたままで頷くと先輩は固まった私を強引に立たせてロビーに引っ張って行きました。

明るい空間に出された私は、ようやく落ち着いて先輩に先程の不可解な問い掛けの意味を聞きました。すると、昔から観客が舞台の下から客席を見ている人がいて舞台に集中できないとクレームが時折有った事、観客以外にもそんな事を言うスタッフも居た事を話してくれました。

しかし実際にはその格子の向うは板が貼られてあり、誰も舞台の下から客席を覗いたり出来ないという事でした。

私は先輩に その格子の向う側はどうなっているのか連れて行って欲しいと頼みました。

意外とあっさりと承諾してくれた先輩は、そこは舞台下の奈落という場所で、迫上がりのキャストがスタンバイする場所で 倉庫としても使っている場所だと説明しながら私を奈落に連れて行ってくれました。

そこは薄暗く白熱電球がぼんやりと奈落全体を浮かび上がらせていました。観客席に面した場所まで大道具のセットの間を抜けて進んだ時、私は目の前の光景に心臓が口から飛び出しそうになりました。

そこには6体ほどのマネキンが私の方に向いて立っていました。

男の子のマネキン、女の子のマネキン、大人の男女のマネキン等が客席側に背を向け、私の方を見ていました。何故か女のマネキンだけが私と目が合っていて、何かを訴えかけてくるそのマネキンの黒い眼球から視線を逸らす事が出来ませんでした。

先輩は何かを察したのか、私の腕を引っ張って奈落から連れ出しました。



何で奈落にマネキンを置いてあるのか聞くと、展示場で終戦記念日のイベントとして戦時中の衣装を着せて設置する為だそうで、それ以外はずっと奈落に放置しているとの事でした。

あのマネキン達は先程まで客席側を向いていて格子の間から私を見ていたのではないか?奈落に私が訪れたから振り返ったのではないか?

何故、あの女のマネキンと目が合うのか?

という恐怖の思い込みがつのる中で 心臓の鼓動も収まらないまま私は舞台上に戻り、リハーサル後の修正の為に舞台上に3m程の高さの脚立を立ててその上で照明器材を調整していました。

すると突然足元の感覚が消え、私は頭から舞台の上に落ちて行きました。

そのまま私は気を失ってしまいましたが・・・。目撃者に依れば、突然脚立の階段面をつないだ金属が裂けてアルファベット大文字のAの横棒を失った脚立が漢数字の一になってしまったそうでした。

大きな怪我には何故か至らず、少し頭が弱くなっただけでしたが、のちのち思い返せば、小学校の時の出来事とリンクする部分もあり気味が悪く、いまだに理解出来ない出来事でした。

そして、私はいまだにマネキンが苦手です。

(アトラスラジオ・リスナー投稿 讃岐の白狐さん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 まるう / photoAC