5月16日、「第29回三島由紀夫賞」(新潮文芸振興会)の選考会が行われフランス文学者の蓮實重彦氏が受賞した。
蓮實氏は現在80歳。フランス文学研究のほか、映画評論、文芸評論の分野でも活躍しており、小説は22年ぶりの執筆だった。
5月16日の会見では、蓮實氏は「(受賞は)まったく喜んでいない。迷惑な話だと思っています」と語り、物議を醸している。
蓮實氏は東大の総代も勤めたことのある評論界の長老のひとりで、小説が本業ではないため、「もっと若い人に賞をあげるべき」と会見で語っており、前代未聞の立腹会見となってしまった。
しかし、この受賞会見には「プロレス」の要素があるのではないか、と一部で囁かれている。
まず蓮實氏は、三島賞ノミネートの打診があった際に断っておらず、また賞を返還する動きも見せていないのである。記者の「受賞が決まった際はどのような心境でしたか?」と聞かれた際にも、蓮實氏は「心境という言葉は私のなかに存在しない」「プライベートなことは答えられない」とバッサリだったものの、作品をしっかり読んだと思われる記者の質問に対してはキチンと答えており、作品のなかに登場する「ばふりばふり」という謎の擬音については、「70年前に読んだ漫画作品から」と元ネタまで明かしていた。
蓮實氏としてはマスコミ的な報道に嫌気が差していたと思われるが、本を売る気は満々で「三島賞受賞」自体はやぶさかではないといった印象を受ける。また、終始不機嫌ながらも抑えるポイントはしっかり捉えるという会見は、往年のプロレス中継のようであり、蓮實氏が考えたものなのか、出版社が考えたものかは不明だが、印象に残る会見となったのは間違いない。
一部では芸人の又吉直樹氏の芥川賞受賞に対抗して、三島賞では蓮實氏のブチギレ会見を考えたのではないかとされているが、真相は不明のままだ。
文:大森エビフライ