1969年から1971年まで放送された、当時大人気を博したテレビドラマに『柔道一直線』という作品がある。
当時の若手スターだった桜木健一が主演をつとめ『巨人の星』とともに「スポ婚ブーム」の端緒となった大ヒット作品である。また、本作は制作に関わった多くのスタッフが『仮面ライダー』へと移行して、ライダーキックなどのアクションの参考にされたことで、本作は「仮面ライダーの元祖」との呼ぶ声もある。
さて、そんな柔道一直線の人気絶頂期だった1970年の話である。主人公である一条直也(演:桜木健一)のスタントマンをつとめていた17歳の少年がトランポリンを使ったアクションの失敗で死亡するという事故が発生した。
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事故は、物語の中で一条が国体に向けて習得しようとした実在する技「空気投げ」の特訓シーンで演出としてトランポリンを使用中、カメラが回っていた本番のシーンで着地に失敗。そのまま病院に運び込まれが、数日後に亡くなったという。
1970年9月3日の朝日新聞の記事によると、同年9月2日午後2時頃、『柔道一直線』スタッフ・出演者一同は岩手県九戸郡の海岸へ来ていた。
当時、『柔道一直線』は子供のみならず桜木や当時はアイドル並みの人気者だった近藤正臣など今でいうイケメン俳優が多く出演していたことから、ロケ先や宿泊先に多くのファンが集結。さらに毎回の視聴率は平均20%以上という超人気番組ということもあり、ロケの前日には岩手県庁から手厚いもてなしもあり、地元ではトランポリン実演のイベントも開催していた。そのため、スタントマン側も疲れが溜まっていたことが原因だったのではと朝日新聞では報じている。
特撮番組は生身の人間がアクションシーンを演じることに魅力があるため、昭和の番組に於いてはとりわけ、どうしても危険なシーンを演出しがちに傾向にあった。
このように『柔道一直線』での死亡事故は特撮業界で痛ましい事件のひとつとして記録に残ってる。
(文:安坂由美彦 山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーション・ATLAS編集部)