ルネサンス期の芸術家ミケランジェロが王様の依頼でダビデ像を作ることになった。
懸命に働くミケランジェロのもとにある日王様がやってきた。そこで王様はこんな注文をつけてきた。
「なかなか良いんだが、少しダビデ像の鼻が高すぎやしないかね」
すると、ミケランジェロは王様にはわからないように木屑を拾い、ダビデ像の横の足場に登り、
「カーン」
とひときわ高い音を立て、隠し持ってきた木屑をパラパラとばら撒いた。これを見た王様は「うん、これで良くなった」と満足して帰っていった。
勿論、鼻の高さは全く変わってなく削ったふりをしただけだが、王様は満足したのだ。
この話は歴史的事実ではなく、作られた寓話だと思われるが、筆者は好きな話である。
ビジネス書などでも使われるが、権力者に対して露骨な抵抗をすることなく、権力者の顔を立てながらも自らの作品を守ってみせたその機転は人生を渡っていく参考になる。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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