先日、ATLASでは渋谷区の住宅街にオオサンショウウオが現れパニックになったという内容の記事を掲載したが、今回はもう一つ戦後に発生したオオサンショウウオにまつわる珍事件をご紹介しよう。
今から約50年前の1966年。岡山県某所にて国の特別天然記念物であるオオサンショウウオが調理され食べられていた、と判明した。
これは1966年7月3日付けの毎日新聞が報じたもので、なんと岡山県のとある旅館では「オオサンショウウオの料理が食べれる」との謳い文句で、お客を呼び込み売上を伸ばしていた旅館が存在していた。
オオサンショウウオは、最大全長150センチメートルにも及ぶことのある大型の品種で日本にしかおらず、20世紀に入ってから環境汚染などの問題もあり個体数が続々と減少。昭和2年(1927年)には国の特別天然記念物として制定されている。
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Giant Japanese Salamanders | National Geographic
サンショウウオは多くの方がご存知のように、色が黒く非グロテスクな見た目をしており一見、食用には向かないと思われがちだが、その身は非常に柔くスッポンのような味がしておいしいという。現に美食家として知られた北大路魯山人は彼が個人的に発行していた冊子にて「ここだけの話」として、大正時代に知り合いから生きたオオサンショウウオを譲ってもらい(この当時は天然記念物に指定されていなかった)、調理して食べたことを告白している。
そのような事情からも、戦後の美食家連中の間で「オオサンショウウオを食べたい!」というニーズが高まり、1960年代に闇ルート(岡山はオオサンショウウオの生息地)でオオサンショウウオ料理を食わす旅館が少なくとも2~3軒は存在した。ただし、後日これらの旅館は厳しく処罰せられたという。
人間の好奇心が生んだなんとも珍妙な事件である。
(文:穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像『川の王さまオオサンショウウオ (ドキュメント地球のなかまたち)』