祈祷の日、まだ慣れないながらも妹は一生懸命に祈祷をおこなった。願いが叶うとあって、何か壮大な儀式めいたことを行うのかとYさんは思ったが、思いの他あっさりと祈祷は終わった。
こんなものなのかと思ったYさんだが、妹からは釘を刺された。
「お姉ちゃん、期限だけは絶対に守ってね。私はまだ実際に目にしたことはないけど、期限を破ると本当にひどい目に遭うからね。これは約束だよ!」
Yさんは期限を守ることを誓い、妹と指切りをした。そして、祈祷の効果を信じながら、東京へと戻った。
期待とは裏腹に、やはりオーディションに通らない日々が続いた。だが、Yさんの髪も少し伸びたころ、急にオーディションの選考に残る確立が上がってきた。今まで、まるで手応えの無かった審査で2次、3次と先に進めるようになってきたのだ。
それでも最終的に合格の結果が出るオーディションはまだなかった。Yさんはそんな状況にもめげていなかった。ようやくきっかけがつかめたという感触に喜び、いままで以上にレッスンに励み、歌唱力に磨きをかけた。
そうして1年以上が経過したころ、ついにある音楽プロダクション主催のオーディションに見事Yさんは合格した。
この発表にYさんは、ついに長年の努力が報われる日が来たと涙を流して喜んだ。
だが、すぐに歌手デビューとはならなかった。プロの歌手になるためにまだ歌唱力で足りない部分があるとして、トレーニングを受ける日々が続いた。
(※続く)
(監修:山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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