行えば願いが叶うと言われている祈祷。だが、その祈祷には制約があった。効果には起源があって2年間しか効力は続かず、2年後にはどんな状況であってもその願いを諦めなければいけなかった。
元々、祈祷のことなどたいして信じていなかったYさんは、すっかりその祈祷のことを忘れていた。でも今のYさんはどんなものでも可能性が一ミリでもあればそれにすがりたかった。たとえ期限があっても、1回でもAが見ているような世界が見れれば、もうそれで良いとさえ思っていた。
Yさんはそれほどまでに追い詰められていた。
故郷に帰ったYさんは、妹に会った。Yさんが家業を継がなかったため、妹が家業を継ぎ巫女になっていた。Yさんはその話を親戚から聞いていて、頼めるのは妹しかいないと思っていた。
妹は姉が継がなかったため、巫女になった身であったが、別に他にやりたいことがあったわけでもなく、巫女もなってみるとそれなりに面白さのある仕事で、別に姉を恨んでいるわけではなかった。
妹は久々の姉との再会に喜んだ。Yさんがわけを話すと最初は祈祷を嫌がったものの、思いの丈を話すうちに段々と理解を示してくれ、最後には折れて祈祷を行ってくれることになった。
祈祷では捧げものをしなければならないという決まりがあった。捧げものはその人が大切にしているものでなければならず、その人の体の一部であればなおのこと効果が得られるとのことだった。
Yさんは考えた末に、ずっと伸ばし続け、大切にしてきた髪の毛を捧げものにすることにした。
(※続く)
(監修:山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像©PIXABAY