福岡市の米一丸踏切付近に米一丸地蔵尊という史跡がある。
筆者の身内がかつて付近に居住していた関係もあり様々な話を聞く事ができた。自転車で塔の前を走ると後部座席が重くなるとか、深夜、塔の周辺を人魂が浮游するとか、兎に角やたらと怪談の多い史跡であるらしい。
付近にもう一ケ所供養搭(軍人関連の塔らしい)があるのだが、その二つを結ぶラインに並行した線路が事故多発地帯であるという。今年の9月現地取材に出かけたが、その佇まいは恐怖を喚起させるには充分であった。心より犠牲者の成仏を願いたい。
それでは米一丸伝説を紹介しよう。木島長者の息子に生まれた米一丸は、世にも美しい湯川長者の娘・八千代姫を妻に迎える。
だが、米一丸の主人である京の一条殿は、八千代姫に横恋慕し、米一丸を亡き者にすべく陰謀をめぐらす。そして、一条殿は博多で借金の肩として入質している家宝の太刀を取返して来るよう命じた。主人の命に逆らえず、米一丸は、愛しい妻を残し、博多に赴くが、金額が足りないと言って相手はなかなか返却に応じない。
一方、一条殿は米一丸の留守を良い事に、八千代姫に言い寄るという非道にでる。更に一条殿とグルになっている博多の守護職は、米一丸に刺客を送り込む。追手を切り伏せながら、米一丸は怨みながら絶命していったという。
また米一丸を心配し、博多に出向いた八千代姫も米一丸の死を聞き、自害してしまうのである。
以後付近では怪異が頻発し、現代の怪談として「米一丸伝説」が語り継がれている。
恋は人を魔物にするのだ。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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