先日、ATLASでも報じた通り2018年6月9日午後9時50分頃、新大阪に向かっていた東海道新幹線のぞみ265号の13号車車内にて若い男がナタを振り回し、男性1人が死亡、20代の女性2人が重傷を負うという事件が発生した。
犯人は愛知県の無職・小島一朗容疑者で「むしゃくしゃしていた。誰でも良かった」と供述している。誰しもが利用する機会のある、新幹線の車内で発生したこの凄惨な殺人事件は日本全国に衝撃を与えている。
なお、この日ののぞみ265号は土曜の夜ということもあり、多くの乗客で埋まっており、事件の発生した13号車にはプロのお笑い芸人も同乗しており、車内で起こった状況をTwitterに投稿していた。
その芸人とは、桂文枝一門で、桂文福の弟子、女性落語家の桂ぽんぽ娘(かつら・ぽんぽこ)だった。彼女は翌日に行われる大阪のライブへ出演予定があり、事件のあった、のぞみ265号に乗り合わせていたのである。
ぽんぽ娘は「新幹線の前の車両で事件発生。 人が逃げてきて大パニック。 通路血まみれ~」「~自分が被害にあっていてもおかしくなかったからです。 まだ通路には生々しい血痕があります~」と緊迫した現場の様子を投稿していた。
某ニュース番組では、「桂ぽんぽ娘」の芸名は出さずに乗り合わせていた女性客として取材を受けており、彼女の青ざめた表情が放送されていた。現在、彼女のTwitterには彼女のファンと思われるユーザーから「頑張って!」「どうか自分を責めないで下さい」と応援のコメントが投稿されている。
さて、桂ぽんぽ娘は大阪を中心に活躍する女性落語家のひとりであるが、東京も含めて女性の落語家はわずか30人程度しかおらず、これは東西の落語家の全体の5%以下の割合とされている(落語家全体の総数は700人弱)。ところが、この30人のなかには、今回の桂ぽんぽ娘のように殺人事件に巻き込まれ、奇跡的に生還した落語家がいる。
5代目桂文枝の弟子の3代目桂あやめである。
桂あやめは1992年1月、関西地方を恐怖に陥れた殺人事件「スナックママ連続殺人事件」を起こしていた逃亡中の犯人に自宅アパートを襲われ、現金14万円を奪われる被害にあっている。桂あやめは命に別状はなかったが犯人に首を絞められ失神。殺人未遂事件となっている。
この事件は当時のマスコミも大きく取り上げられ、桂あやめは「殺されかけた落語家」として有名になった。
なお、今回の新幹線殺人事件の桂ぽんぽ娘と桂あやめは桂文枝一門で同門(桂あやめの兄弟子がぽんぽ娘の師匠である桂文福)の関係にあたる。
全体数の少ない女性の落語家のなかで、しかも同門という稀有な条件のもと、無差別殺人事件に巻き込まれた人物が二人もいるという事実は「とんでもない受難率」「奇跡的な確率のサバイバー」と落語マニアの間で大きな話題になっているようだ。
(文:パンダ・レッサーパン・ダグラフ ミステリーニュースステーション・ATLAS編集部)
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