本アトラスでこれまでにも何度か取り上げている、1910年にアメリカで発行された「木こりの森の恐ろしい動物たち」。
19世紀から20世紀初頭にかけてアメリカで実在が信じられていた未確認動物や妖怪の伝承を挿絵付きで紹介したもので、その生物の造形は今から見ても非常に独特なものが多い。
ウィンプスこと「Whirling whimpus(渦巻く鞭打ち)」はテネシー州のカンバーランド山脈の広葉樹林一帯に生息するという伝説のある、一種の獣人だ。テネシー州東部の林業従事者らに目撃されており、ゴリラに似た頭と巨大な前足を持っているという。
大きさも約7フィートと大きく、北米大陸を代表するUMAのビッグフットに似ている。しかし違う点もあり、ウィンプスはビッグフットのように全身が毛皮に覆われておらず、黒い肌をしているそうだ。足は体に比べて短く、先に蹄がついているともされている。
この生物は狂暴で、人や七面鳥、鹿、牛、さらにはクマすらも獲物にするという。更に非常に俊敏であり、狩りをするときはあるポーズをとることで姿を消してしまえるのだという。ウィンプスは獲物を見つけると両腕を拡げ蹄を支点に高速で毎分2,150回転する。
その姿はさながら森の中に出現したつむじ風のようなもので、更にウィンプスが日没後に活動しだすこともあってその動きを目で追うことは不可能に近くなるという。よくマンガで「あまりにも動きが素早くて姿が消えて見える」という描写があるが、この生物はそんな描写を体現してみせるのだ。よってウィンプスが生息している地域では経験の浅いハンターや森を散策する人々が姿を消してしまうことが度々起きるという。
アメリカなどではビッグフットの神出鬼没さから、実は幽霊であるという説や何らかの能力を持っているのではないかという突飛な説が出てくることもある。そんな説が出てくる背景には、この妖怪の存在があるのかもしれない。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像©F E A R S O M E C R E A T U R E S O F T H E L U M B E R W O O D S