【古典怪談】「白い手」(後編)

【古典怪談】「白い手」(前編)より続く

また生臭い風が吹き、木々が不気味に揺れた。聞こえてくるのは木々の葉擦れの音ばかりであった。

残された男はよほど肝の座った男だったのだろう。自分の股間をつかむ手に語りかけた。

「わしに何か用があるのか?」

すると、白い手の先にぼんやりと人の姿のようなものが現れた。若い女であった。ざんばら髪で、薄汚れた着物には、黒くなった血が付いている。

女は半眼の目で男をじっと見つめながら言った。

「お願いがございます」
「なんだ?」




「護符を剥がしてくださりませぬか」
「護符? どういうことだ?」

女はゆっくりと話しはじめた。

「私は長者の家に生まれ、何不自由なく暮らして参りましたが、ある欲の深い男に家族全員亡き者にされ、家までも取られました。あの男に復讐してやりたい一心でこの世に留まっているのです。ですが、男の住む家には護符があって入れぬのです。どうかあの護符を剥がしていただけませぬか」

男はしばらく考え答えた。

「わかった。引き受けよう」

男は女と共に、男が住む屋敷に向かった。行ってみると、確かに門前に護符が貼ってある。男は護符を引き剥がした。




女の霊は門を通ると、屋敷の中にスーッと消えていった。

次の瞬間、屋敷の中からすさまじい悲鳴が聞こえ、ドタドタと部屋の中を逃げまわっているような足音が聞こえた。しばらくすると、声も足音も聞こえなくなり、また葉擦れの音だけが聞こえてきた。

ふいに男の前に女の霊が現れると、深くお辞儀をして消えていったという。

(監修:山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©PIXABAY

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