これは昭和末期に発覚した怪奇事件である。1987年4月8日の朝日新聞に「夫のミイラとドライブ3週間」という何やらオドロオドロしい記事が掲載されている。
なんと、死んだ夫の遺体を車に積んだ妻が行方不明になっているというのだ。
記事によると、この奇妙な夫婦は東京都杉並区で室内装飾業を営んでいた仲睦まじい二人だったが、86年11月、夫のAさんが脳溢血で倒れて意識不明の重体となり入院していた。Aさんはしばらく病院で治療を受けていたが一向に回復はせず、ある日、妻のB子さんは「もう病院は信用できない。私の方法で夫を治す」と一方的に退院を決めてしまう。
医師は「退院は危険だ」と注意したがB子さんはまったく聞く耳を持たず、愛する伴侶のAさんを無理やり病院から退院させた。その後、B子さんは自宅で懸命に看病したが、そんな努力も報われることなく医師の忠告通りAさんはそれから1週間後に亡くなってしまった。
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しかし、Aさんの遺体を死体検案のために再び病院へ引渡したくなかったB子さんは、Aさんの友人Cさんを「夫を埋葬してくれる寺を探したい。一緒に来て欲しい」と誘い出し、夫の亡骸を引き受けてくれる寺を探す旅へ出発。一行は夫の故郷である西へ向かうことにしたという。
B子さんとその友人Cさんは、Aさんの亡骸を手製の棺桶に詰めワゴン車で出発した。途中で寄った寺という寺へ「夫の死体を預かって欲しい」と頼み込むが次々と断られ、一行は京都から奈良、九州へと足を伸ばした結果、寺探しの旅は実に3週間に及んだという。
逃走3週間にも及んだ道中、Aさんの遺体は既にミイラ化しており、腐ることはなかったが、遺体との生活に怖くなった友人CさんはB子さんを見捨て東京へ逃げ帰ったという。そして、Cさんが杉並署へ駆け込んだことにより、この事件が初めて明るみになったという。
以来、Aさんの遺体およびB子さんは未だに行方知らずになっていて、事件から30年が経過した今も彼らがどうなったのかはわからないという。
果たして、Aさんは愛する夫の遺体と日本のどこまで旅をしたのだろうか…。本事件について、何か続報を知ってる方がいたら是非、情報をお寄せいただきたい。
(文:穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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