浅見光彦シリーズの絶筆を誰が受け継ぐのか、今大きな話題になっている。
先週の3月13日、人気作家の内田康夫氏が肺がんで亡くなってしまい、毎日新聞の夕刊に連載されていた和歌山県熊野を舞台にした『孤道』の絶筆により作品自体が宙に浮いている。これからミステリーが解決されるといった段階での絶筆は、多くの内田康夫マニアを大いに失望させているようだ。
とりあえず内田氏によって執筆された部分だけ単行本として、今年の5月に発売されることが決まったが、残りの解決編はプロアマを問わず公募によって募集するという斬新な企画に注目が集まっている。
作家が亡くなってしまい、執筆中の作品が未完に終わってしまうことは多々ある。
2009年に亡くなってしまった伊藤計劃(いとう けいかく)氏の絶筆は円城塔(えんじょう とう)が受け継ぎ、3年4か月をかけて長編『屍者の帝国』を完成させた。
ミステリーの女王であった山村美紗氏の絶筆は、盟友と言われた西村京太郎が引き継ぎ完成させた。また絶筆ではないものの、横溝正史氏の発掘された幻の原稿『死仮面』は、中島河太郎氏によって欠落部分の穴埋めがなされている。
さらに小説ではないが、石ノ森章太郎が完成することができなかった「サイボーグ009」の神々との激闘編は、残された創作ノートを元にして息子の手によって小説として執筆作業が行われている。
内田マニアの期待とプレッシャーが降りかかるだろうが、ぜひとも作品を完成に導いてもらいたい。
(すぐれいち恭介 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)