先日、ATLASでは『TVジョッキー』で放送されたという「ゴキブリを食べて死んだ男」にまつわる都市伝説をご紹介させていただいた。
記事中では「ゴキブリを食べて死んだ男」はあくまで都市伝説で、事実かどうかはわからないと〆させていただいたが、実は「ゴキブリ男」のほぼ同時期に「ネズミを食べる男」がTVジョッキーに実際に登場していたことがこの度判明した。
雑誌『週刊平凡』(ああ、懐かしい・・・)の1973年第45号に、「高校生がテレビでネズミの首にガブリ、血だらけ!」のタイトルでTVジョッキーに登場したゲテモノ食いを得意とする高校生のインタビューが掲載されている。
記事によると、青森県八戸市の工業高校へ通う2年の学生が、TVジョッキーの「奇人変人コーナー」に登場。高校生は生きたネズミをワシ掴みにしていきなりガブリと噛み付いたかと思うと見る間にその頭を食いちぎってしまったという。
こんな凄惨な現場中継が日曜のお昼、しかも生放送で行われてたというのだから昭和というのはなんとパワフルで寛容な時代だったのであろうか…!しかもネズミといえば、体内の中に無数の病原菌がいることからもゴキブリ以上に人体への影響も大きそうであるが…。
記事によると、この高校生は実はネズミを食べるのはこのTVジョッキーが初めてで、それまでは一切食べたことがなかったとかなり衝撃的な暴露をしていた。
この男子高生が番組に出演した理由というのが、ある日TVジョッキーを見ていたら「ヘビを食べる人」が登場しており「ヘビは田舎の料理でも食べるし、あの程度ならこのオレでもできるぞ」と思い番組へ応募。すると、あれよあれよという間に出演が決定してしまったという。
なお、この記事には当時TVジョッキーの番組ディレクターを務めていた人物のインタビューが同時に掲載されていて、「当初(高校生は)はハツカネズミを食べる予定だったのだが、衛生問題その他を考慮して無菌の実験用ラットを番組で用意した」と告白している。
つまり、TVジョッキーの「ネズミ食い」は安全策を張り巡らせたうえで行われたショーであり、人体への影響は一切なかったという(とは言え、この高校生もよくぶっつけ本番で生きたネズミを食べられたものだと感心してしまうのだが…)。
以上の事実を踏まえて都市伝説化している「ゴキブリを食べて死んだ男」を改めて検証してみよう。
制作サイドは時が1970年代前半であっても、少なくとも健康被害に関しては当然問題意識を持ち、また安全策も十分に図っていたはずである。つまりその辺で捕まえてきたゴキブリを出演者に食べさせるなどの事実はまずなかったのではないか考えることが出来る。ということは、この「ゴキブリ男」の話は「海辺の岩場で膝から転んで、暫くして気付くと膝の骨にビッシリとフジツボが繁殖していた」と同じような恐怖伝説であることに相違ないのだ。
なお、「ネズミ食べ男」の記事が掲載された週刊平凡には男がネズミを食べるシーンの静止画を数枚であるが掲載しており、当時のTVジョッキーが放送されたスタジオの模様がわかる資料になっているので気になる方はバックナンバーを探してみるのも一興であろう。
(文:穂積昭雪 山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーション・ATLAS編集部)
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