かつて昭和時代は豪快な俳優が多かった。アトラスでも石原裕次郎や小林旭のユニークな逸話を紹介してきたが、この男を忘れてはいけない。
昭和の名俳優・勝新太郎である。
勝はとにかく豪快だった。銀座で飲んでいても支払いはすべて自分持ちである。一緒に飲んでいる関係者や仲間に払わせるような事は一切しない。しかも関係のない人たちの分も払ってしまう。
ただ同じ店で同じ時間帯で飲んでるだけで、サラリーマンやOLの飲み代も払ってしまうのだ。次の店に行く時はそんな関係のない人も一緒に連れて行く。だから3軒目や4軒目になると100人ぐらいの集団になっている。その100人の集団が銀座を移動して飲み歩いたというのである。
他にも豪快なエピソードはある。妻の中村玉緒と喧嘩になった時の事、玉緒が怒っている顔に対して「なかなかすばらしい演技だ。次の芝居に使えるぞ!」と演技論が始まり、喧嘩がおかしなことになってしまったという。常に芝居のことを考えている勝であったようだ。
またある時、勝と息子が車を見に行った。すると勝がやたらとデカい車を買おうとする。息子は思わず「こんな車いらないよー」と反発した。しかし、勝新太郎はどうしても大きな車を買おうとする。息子がシビレを切らして「どうしてデカい車を買うのさ」と聞いたという。
すると勝は真面目な顔でこういった。「勝新太郎だからさ!」
なんとも豪快な話ではないか。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像『俺、勝新太郎 (廣済堂文庫)』