滝霊王は江戸時代の絵師、鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」にて紹介されている妖怪である。
もっとも、妖怪というよりも仏尊の霊験を描いたものと見た方がいいかもしれない。
絵に添えられた文には「諸国の滝つぼよりあらはるると云 青竜疏に一切の鬼魅諸障を伏すと云々」とあるため、日本全国で報告されている滝に顕現した仏尊の姿を象徴的に描いたものなのだろう。
絵には火炎とともに滝壺に現れた不動明王の姿が描かれている。そのため、不動明王そのものを描いたのではないかとする説も存在する。
滋賀県には滝壺から引き上げた霊木で不動明王の姿を彫り、尊体としたとする伝説が残っている。滝という荘厳な場所に対する畏敬の念が生み出した妖怪が滝霊王なのかもしれない。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像©Wikipedia 鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より「滝霊王」