日本の記紀神話、日本書紀に登場する異形の人物。それによると、両面宿儺は一つの胴体に顔が二つ、それぞれ反対側(前後)についており、二つの頭の頂は合わさってうなじが無かった。
また腕は4本、膝はあるがひかがみ(膝の裏)と踵も無かったとされている。力は強く、俊敏でもあり、四本の手で二張りの弓矢を引く事が出来た。身の丈は八尺、約3メートルはあったとされている。
両面宿儺は仁徳天皇の時代に飛騨地方に住んでいた豪族の長であり、朝廷の命に従わず人民から略奪することを楽しんでいたため、難波根子武振熊(たけふるくま)を遣わして征伐したという。
このように日本書紀では逆賊であり、暴君として描かれる両面宿儺であるが、地元の飛騨地方や美濃地方には日本書紀の記述とはまた違う伝承が多く残っている。例えば関市にある大日山日龍峰寺には両面四臂の異人が高沢山に住んでいた毒龍を征伐したという伝説が残り、様々な寺の縁起にも登場する。
これらの伝説の中には後世になって成立した物も多いが、やはり昔からその地に伝わっていた両面宿儺に関する伝承を下敷きに発展していったのではないか、とする説もある。
記紀神話では、しばしば朝廷に従わない者たちを異形として描き、化け物のような呼称をつけるケースがあった。『土蜘蛛』等はその最たる例で、彼らの持っていた勢力や特殊能力に対する恐れと、権力に屈しないことに対する蔑視から妖怪のように表現されるようになったのではないか、と言われている。
両面宿儺もまた然りで、膝裏と踵がないという描写も山岳民の履いていた臑当てやつまがけ(下駄などの先に着ける雨や泥よけの覆い)を表現したものではないかとする説がある。
(監修:山口敏太郎/飯山俊樹 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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